Blender ウォッチング

「Blender」最新版のビューアーノードは処理途中の状態をプレビュー可能

キャビティ自動マスクも追加、日本語化の適用範囲も広がり使いやすく

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

大量のブロックで作られたモデルも「キャビティマスク」とスカルプトでそれぞれの端の部分を劣化した状態に

 12月7日(GMT)、「Blender 3.4」が公式リリースされました。このリリースにも新機能が追加されています。

 今回は前回に引き続き、新機能や変更について解説していきます。

「ビューアー」ノード

 オブジェクトの形状をノード設定で加工し、色々な形状を自動生成できる「ジオメトリノード」機能にも、バージョンアップごとに毎回ノードや機能が追加されています。

 今回はその中の「ビューアー」ノードを取り上げ、他の新ノードの一つであるUV表面サンプルノードの「サンプルファイル」を解析してみたいと思います。

「ビューアー」ノードの使用方法

 「コンポジター」でツリー途中での処理内容のプレビューが可能な「ビューアー」ノードが、ジオメトリノードにも追加されました。これで制作やノードの理解が楽になります。

 [追加]-[出力]メニューの[ビューアー]で追加し、内容を見たいノードとつなげます。

[追加]-[出力]メニューの[ビューアー]で追加

 このノードをクリックして「アクティブ」にした時に、「3Dビューポート」に、対象のオブジェクトの上に「ビューアー」ノードで表示した形状が重ねて表示されます。さらにノード右上の「目アイコン」でも表示の切り替えができます。

ノードのクリックとノード右上の「目アイコン」で表示の切り替え

 「ビューアー」ノードによる表示は[ビューポートオーバーレイ]ポップアップで設定可能で、さらに3Dビューポートの[ビュー]メニューの[ビューアーノード]チェックボックスでエディター単位の切り替えも可能です。

[ビューポートオーバーレイ]ポップアップで表示の設定が可能

サンプルファイルのジオメトリノードを覗いてみよう

 今回、他にもいくつか新規ノードが追加され、ちょうどその1つである「UV表面サンプル」ノードのサンプルファイルが追加されています。この中をちょっと覗いてみましょう。

リンク先のデモファイルの中から図の囲み内の画像をクリックしてダウンロード

 ダウンロードした「geometry_nodes_sample_uv_surface.blend」を開くと下図のような感じになります。

 上側の2つの「3Dビューポート」の右側のエリア内では、カーブオブジェクトが[編集]モードで開かれており、[ドロー]ツールが有効になっています。マウスドラッグで何かを書くと、それが右側の布の上に刺繍として現れる仕組みになっています。

「geometry_nodes_sample_uv_surface.blend」を開いてみた状態

 とりあえずこんな感じで上下に文字を書いてみました。対応する面は裏側にありますので、下図のように感じに刺繍が生成されます。右の3Dビューポートではみ出している「!」が左にないことに注意してください。

なお、デフォルト状態ではわかりにくので、図では裏側に回転し、表示モードも変更

 動作がわかったところで、下のジオメトリノードエディター内のノードツリーをマウスホイールで拡大して見てみます。

下のジオメトリノードのツリーの拡大図

 大きなノードツリーですので、とりあえずジオメトリ情報が流れる緑のリンクの、一番上の物に注目することにします。

 緑のリンクの左側の「リルート」(リンク上の点)の部分と、その右側の「Remove Invalid」と書かれている部分に「ビューアー」ノードを追加してみました。「Remove Invalid」の「ジオメトリ削除ノード」には「UV表面サンプル」ノードがつながっているため、その挙動を確かめることができます。

「Remove Invalid」の両側に「ビューアー」ノードを追加

 まず左側のビューアーノードをクリックしてみます。文字が布の上ではなく、XY平面上に表示されています。これはまだ未処理であることを示しています。

 次に右側のビューアーノードをクリックしてみると、同様に平面上に表示されていますが、何かが違います。右側を見てみると、最後の「!」だけがなくなっています。

左右の「ビューアー」ノードを切り替えて挙動の違いを確認

 リンクをたどってみると、「UV表面サンプル」ノードの「有効」ソケットからUVの範囲内かどうかを出力し、その部分を消すようにしていることがわかります。

下の「UV表面サンプル」ノードでUV範囲外を判定し、「有効」ソケットから値を反転後に「ジオメトリ削除」で削除

 こんな感じで既存のジオメトリノードの中身を解析できます。ちなみにノードツリー内にもう1つあるこのノードは、面の向き(ノーマル)を取得するのに使用されています。興味がある方は調べてみてください。

キャビティ自動マスク

 メッシュオブジェクトのスカルプトツールにて、キャビティ(凹み)情報でマスクを自動的に作成可能になりました。

 「スカルプト」モードで[マスク]メニューの[キャビティからマスク]、もしくは[ブラシ]ポップアップの[キャビティ]-[マスク作成]を実行します。

「スカルプト」モードで[マスク]メニューの[キャビティからマスク]、もしくは[ブラシ]ポップアップの[キャビティ]-[マスク作成]を実行

 例えば、尖った部分だけ削り取って破損しているようにしたり、逆に平坦な部分にのみ模様をスカルプトできます。マスク生成後にマスク自体を編集することも可能です。

端が壊れたブロック

ワークスペースの表記が翻訳

 最後にリリースノートにもありませんが、非常に大きく見た目が変わったところがあります。どこでしょう?

 答えは「ワークスペース名」です。「Blender 3.3」から色々な場所のインターフェイスの翻訳が追加されており、今回は新規ファイルの上部のワークスペース名が翻訳された物に変更されています。なお、従来のバージョンで作成したファイルはそのままです。

日本語のワークスペース

 以前のチュートリアルなどで英語名のまま利用したい場合は、[編集]メニューから[プリファレンス...]ダイアログを開いて[インターフェイス]タブの、[翻訳]-[影響]-[新規データ]のチェックを外してください。ただし、他のデータのデフォルト名(追加したオブジェクトなど)も英文になります。

 その他の新機能については公式リリースノート(英文)や、Wiki版リリースノート(和訳)を参照してみてください。

終わりに

 今回はリリースサイクル期間中にBlender Conference 2022があった所為か、以前のアップデートに比べて新機能がやや少なめでした。しかし水面下では「Eevee Next」や「リアルタイムコンポジター」、「シミュレーション」ノードなどの大きなプロジェクトが動いており、順調にいけば次回はもっとたくさんの新機能をご紹介できると思います。

 ではまた。