Blender ウォッチング
無料の3DCG統合環境「Blender 4.3」は金属の反射をよりリアルに再現可能
位相関数による光の拡散表現も
2024年12月11日 16:58
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
11月19日(中央ヨーロッパ夏時間)、「Blender 4.3」が公式リリースされました。
本リリースでは、ペイントやスカルプトのブラシのインターフェイスの刷新や、新バージョンのグリースペンシルのようなペイント系の新機能が目立ちます。
今回は「Cycles」レンダーで改善されたシェーダー、「EEVEE」レンダーの新機能、新しいノイズパターンについてご紹介します。
メタリックBSDFシェーダー
金属の質感用の[メタリックBSDF]シェーダーノードが追加されました。
金属の色付けを計算するフレネルメソッドに、ユーザーによる色付けが簡単にできる「F82チント」と、測定値を直接指定する「物理的導体」のどちらかを選択でき、見栄えを重要視するなら前者、リアリティを追求するなら後者と、使い分けができます。「プリンシプルBSDF」のメタリックはF82チントに相当します。
「物理的導体」モードはいわゆる「Complex IOR」と呼ばれる、光の吸収に対応した複素数による屈折率表現です。「IOR」と「減衰」値はそれぞれ「n」(実部)と「k」(虚部)に対応しており、PHYSICALLY BASEDなどのようなサイトで参照できます。
なお、「v4.3」の時点ではCyclesレンダー専用になっており、[マテリアルプレビュー]シェーディングモードとEEVEEレンダーではF82チントで代用されます。
オーレンネイヤーBSDFの改善と結果の違い
オーレンネイヤーBSDFとは、[ディフューズBSDF]シェーダーノードで、[粗さ]パラメーターが「0」以外の時に使用されるシェーディングアルゴリズムです。従来、エネルギーの損失で暗くなってしまった面が、エネルギーが保持されることで明るくなりました。
同じマテリアルでも「v4.2」と「v4.3」でレンダリング結果が変わる可能性がありますので、注意が必要です。
Gaborノイズの導入
新しく[Gaborノイズ]ノードが追加されました。方向性のある有機的なランダム模様が作成できます。[値][位相][強度]の3つの出力ソケットがあり、それぞれ特徴的な模様が生成されます。
ボリュームマテリアルの位相関数
霧や雲などを表現できる[ボリュームの散乱]シェーダーノードで「位相関数」が選択できるようになりました。
え? 位相関数って何? っていう方も、とりあえずツールチップに用途が出てくるので、それにあった関数を選択すればOKです。
EEVEEレンダーにもライトリンキング
ライティングを特定のオブジェクトに制限できる「ライトリンキング」機能が、EEVEEにもやってきました! 目のハイライトや顔へのライト、不要な影(光源)の削除などに活躍してくれます。
Vulkan対応
従来、「Blender」は多数のグラフィックソフトウェアで(そしてゲームでも)利用されているAPI、「OpenGL」を表示のバックエンドとして利用してきました。
「Vulkan」はこのOpenGLの後継として策定された新しいAPIで、最近のハードウェアでの性能の向上が期待できます。「Blender」もこのVulkanへの対応を進めており、「v4.3」ではまだ実験的ではあるものの、Vulkanをバックエンドとして利用できるようになりました。
試用するには、まず[編集]メニューから[プリファレンス...]で[プリファレンス]エディターを開きます。次に[インターフェイス]タブの[表示]-[開発者用オプション]を有効化し、[システム]タブの[グラフィックス表示]-[バックエンド]を[Vulkan]に変更した後、「Blender」を再起動すればOKです。。
まだ実験段階であるため、パフォーマンスが低下する可能性があります。また、OpenXR(VR用)と、GPUサブディビジョン(サブディビジョンサーフェスのGPUアクセラレーション)には未対応です。大事なファイルの編集には使用しないでください。