Blender ウォッチング
無料の3Dモデリングツール「Blender」の最新版は使い勝手が大幅向上
トランフォームツール使用中のビュー移動やモディファイアーメニューが改善
2023年12月11日 11:57
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
11月14日(GMT)、「Blender 4.0」が公式リリースされました。実は新機能はそんなに多くはないものの、今回は大型アップデートであり、色々な変更があります。
今回はインターフェイスの変更と互換性についてご紹介していきたいと思います。
12/6に、v4.0の修正版である「Blender 4.0.2」が公開されました。
多数の修正がありますので、是非アップデートしてください。
インターフェイスの変更
大型アップデートという割にはほぼ外見は変わっていないと思う方もいると思いますが、その代わりに多くの変更や改善が行われています。特に個人的にこれは知っておかないとヤベーと感じた物を中心にとりあげたいと思います。
英数字フォントが変わった!
英数字のフォントが変わり、各文字の大きさも少し小さくなりました。日本語インターフェイスではあまり恩恵がないかもしれませんが、プロパティの数値は字間が空いた所為で見やすくなっています。
なお、テキストオブジェクトや、テキストエディターは従来から変更ありません。
タイトルバーの表示が変わった!
現在編集中のファイルが未保存の場合、タイトルバーに「(未保存)」と表示されるようになりました。また、末尾に「Blender」のバージョンが表示されるため、複数のバージョンを使用している場合や、「AutoHotkey」などの外部ツールでバージョン毎に処理を変更したい場合などに便利かもしれません。
トランスフォームツール使用中のビュー移動
メニューやショートカットキー([G]、[R]、[S])で使用するトランスフォーム(移動・回転・スケール)ツールの使用中、以下の操作でビュー操作が可能になりました。
従来では、移動ツールを使用→移動先が見えない!→右クリックでキャンセルして視点移動→再び移動、なんてことが割と頻繁にありましたので、かなり便利です。
- [Alt]+ホイール(中マウス)ボタンドラッグ:回転
- [Alt]+[Shift]+ホイールドラッグ:パン
- [Alt]+ホイール回転:ズーム
なお、 ツールバーのウィジェットをドラッグして使用する同名のツールではできない ので注意してください。また、中マウスボタンを[Alt]+左マウスボタンで代替する「3ボタンマウスを再現」オプションとは併用できません。
モディファイアーメニューが普通に!
「Blender」の中でも異例のサイズを誇る[モディファイアーを追加]メニューが他のメニュー同様の、階層構造を持った普通のメニューになりました。
さらにジオメトリノードのグループノードをメニュー内に表示したり、プロパティエディター上で[Shift]+[A]キーを押して開くこともできるようになっています。
個人的には図を作成する時の悩みの種の1つだったので、この変更は超大歓迎だったのですが、今まで位置で把握していたのがサブメニューで分けられた所為で、わかりづらくなったという人も多いようです。
そのためか、コミュニティでは早速、以前のメニューに戻すアドオンが作成されています。v3.6以前のメニューで書かれたチュートリアルをしている皆さんにも便利だと思います。
アドオンを入れるのが面倒な方は「検索」機能で乗り切ってください。
ペイントツール使用時のヘッダーでのキャンバス表示
「テクスチャペイントモード」などのペイントツールの3Dビューポートヘッダーに、現在編集中のレイヤー切り替えのドロップダウンリストが画像エディターのように表示されるようになりました。
代わりに、プロパティエディターのツールタブに「レイヤーパネル」が表示されなくなったので、そこに表示して作業していた方や、そこでの表示を前提としたチュートリアルを行っている方は戸惑うかもしれません。
ちなみに、ドロップダウンリストが表示される領域にUIを表示していたアドオン(BlenderKitなど)では隣に割り込み表示されます。当然右側にあるアイコン類が画面外に押し出されますので、 ヘッダーをホイールボタンドラッグしてスクロールさせてください 。
「数字を追加して保存」機能
「Blender」には元々、保存時に開く「ファイルブラウザー」の[+]ボタンと[-]ボタンで、ファイル名に数字の付加や、一番右側の数字の増減を行う機能があります。
しかし、v4.0からは[ファイル]メニューに[数字を追加して保存]機能が付きました。恐らく[-]を間違って押してしまう人がいるのかもしれません。
今まで知らなかった方は、blendファイルのバージョニングに便利ですので使用してみてください。
互換性についてのあれこれ
v4.0には機能の改善と引き換えに、互換性がなくなる変更が行われています。
メッシュデータについて
メッシュモデルの構造が変わり、「v3.5」以前のバージョンの「Blender」で保存した「.blend」ファイルは開けますが、逆に「v4.0」で保存したメッシュモデルのあるファイルを昔のバージョンで開くことはできなくなりました。
筆者の環境で試したところ、「v4.0」でデフォルトの立方体一つのシーンを保存したファイルをv3.4で開くと即クラッシュしてしまいました。
ただし「v3.6」では開けますので、この場合は 一度「v3.6」で保存後、他のバージョンで開く ようにしてください。
また、バージョン毎にフォルダーを分けたり、名前にバージョン番号を入れるなどで、「v4.0」で従来のblendファイルに上書き保存はしないようにしたり、混在させない工夫をしておくといいでしょう。
色変換について
前回にも書きましたが、v4.0では新しいビュー変換「AgX」がデフォルトになっています。明るい部分の飽和度が高くなっただけでなく、色自体も変化しています(以前のバージョンで保存したファイルはそのまま)。
特に「黒体」による温度から色への変換(「黒体」ノードや「プリンシプルボリューム」ノード)により、炎などに色付けしていたマテリアルは明らかに変わりますので、以前の「Filmic」のままで最終レンダリングするか、自分で補正(プリンシプルボリュームノードでは[黒体のチント]を使用するなど)を行う必要があります。
他にも内部データの取り扱いや、一部環境の対応の廃止などの変更があります。詳しくは日本語版リリースノートをご覧ください。
終わりに
今回は実際の使用において一番気になると思われる「インターフェイス」の変更と「互換性」について解説しました。他にも記載していない物が多数あると思われますので、リリースノートをチェックしてみてください。
それでは。