Blender ウォッチング
「Blender」最新版はよくあるミスを未然に防いでくれる親切設計!
ビデオシーケンスエディターやモデリングに関する新機能も
2025年4月4日 16:01
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
3月18日(中央ヨーロッパ夏時間)、「Blender 4.4」が公式リリースされました。本リリースでは、アニメーションの内部構造の刷新を始め、既存の機能に多数のブラッシュアップが行われています。
今回もその中から独断と偏見で一部をピックアップしてご紹介していきます。
ステータスバーの警告の追加
操作時のヘルプや警告などが表示されるステータスバーに、いくつか警告が追加されました。
オブジェクトに負や非均一なスケールがある時の警告
オブジェクトをスケーリングした後、スケールのXYZ値の中に負の値があったり、全部同じ値ではなかったりすると、ステータスバーに警告が表示されるようになりました。これは「アクティブオブジェクト」のスケールに上記のような値がある時も表示されます。
特に平面を地面として置くときに、負のスケールにして面が裏返ってしまいがちな人(私です)にとって便利な機能です。

オブジェクトを非表示にした時の警告
「Blender」ユーザーのあるあるの一つが[H]キー押下によるオブジェクト消失です。特に移動のショートカットの[G]キーを多用する場合、すぐ隣のキーなのでつい押してしまい、『オブジェクトどこいった?』となりがちです。
v4.4では、間違って非表示になった時、ステータスバー中央に警告が表示されるようになりました。ただ、これは上記のスケーリングとは違い、少し経つと消えてしまいます。恐らく消えた時に気づくのは少し後だと思いますので、実際にはアウトライナーをチェックした方が早いかもしれません。

ビデオシーケンスエディターの改善
ビデオシーケンスエディターでは、プレビューにいくつか新機能が追加されています。
テキストストリップの改善
テキストストリップの背景の角を丸くできるようになりました。
また、プレビュー上で直接テキスト編集できるようになった……のですが、残念ながら日本語には非対応です。
グリースペンシルの改善
グリースペンシルは2Dのストーリーボードやアニマティックを作成するベクターペイントツールです。「Blender 4.3」でv2に一新された際に欠けていた、「ボックス消しゴム」(ドローモード中に[B]キー)や、「レイヤーに貼り付け」などの機能が今回のリリースで復活しました。

モデリングの新機能・改善
今回は構造にこだわりのある人のための新機能が追加されています。
ポール数で選択
ポールとは「極」のことで、「Blender」内でもいくつかの意味がありますが、モデリングでは複数の辺がつながっている部分(頂点)を指します。このポール数は特に「ローポリ」モデルのレンダリングや、「サブディビジョンサーフェス」による辺の細分化時の挙動に影響します。
v4.4では、[検索]メニューの[特徴で全選択]-[ポールの接続数]にて、指定のポール数を限定し、問題となるポールを探しやすくなりました。ポール数と条件は、[最後の操作を調整]パネルにて設定を変更できます。

三角面から四角面への統合の新オプション
メッシュ編集モードの[三角面を四角面に]オペレーターに、新しく[トポロジーの影響]オプションがつきました。実行後に表示される[最後の操作を調整]パネルに表示されすでにある四角面に合わせた統合になります。
すべての面が三角面のモデルアセットをインポートした時、扱いやすいよう四角面に戻すことがよくあります。既存の設定ではうまくいかない場合に活躍してくれるかもしれません。

Cyclesレンダーの改善
Cyclesレンダーには割と重要な変更と、一部の人にとっては嬉しい改善があります。
バンプマッピングの改善
バンプマッピングのアルゴリズムの変更により、従来より正確な凹凸のレンダリングが可能になりました。見た目が変わりますので、同じ見た目にするには調整が必要になります。

OptiXデノイザーの改善
NVIDIAのOptiXによるデノイザーが改善され、従来より高品質なデノイズを行うようになりました。
この改善はドライバーレベルでも行われているため、以前のバージョンの「Blender」でも新しいドライバーを使用すれば、同様に画質は向上するそうです。ただ、最近のNVIDIAの573.xxドライバーは不安定なのと、今もOpenImageDenoiser(以下OIDN)の方が画質は上であるため、OIDN未対応のGPU以外ではあまり恩恵はないかもしれません。

他にもVulkanバックエンドの高速化や対応機能の追加、GeForce RTX 50x0とAMD RX 90x0シリーズ対応、最小システム要件の変更など、ハードウェアに関する改善や変更がいくつかあります。
その他の改善や変更、そして互換性に関する変更については、開発者版リリースノート日本語訳をご覧ください。