Blender ウォッチング
無料の3Dモデリングツール「Blender」最新版は物質表面、人物の髪、色がよりリアルに
プリンシプルBSDFノードが改善、毛の扁平率まで再現、AgX色変換をサポート
2023年11月30日 11:58
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
11月14日(GMT)、「Blender 4.0」が公式リリースされました。実は新機能はそんなに多くはないものの、今回は大型アップデートであり、色々な変更があります。
今回は引き続き、Cyclesで改善された「プリンシプルBSDFノード」「ヘアープリンシプルBSDFノード」、そして「AgX色変換」の3本でお届けします。
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本編に入る前に、Blender.orgサイトについて少し。
先週、Blender.orgのWebサイトへの大規模なDDos攻撃が行われました。幸い、今週はすでに機能が回復していますが、本記事の掲載時にアクセスが再び困難な状況になる可能性はあります。
もし公式サイトからBlender本体やソースコードへのダウンロードができない場合は、下のリンク先の記事にミラーサイトのリストがありますので、そちらからダウンロードしてみてください。
一新されたプリンシプルBSDFノード
「Blender」でこれ1つあれば何でもできるという噂(ウソ)の便利なシェーダーノード「プリンシプルBSDF」が一新しました。変わったところを挙げていきましょう。
外見が変わった!
あのやたら大きく、図を作る時に散々泣かされたサイズが、一部パラメーターが折り畳み可能になったおかげでとってもコンパクトになり、順序も変わっています。
もうベースカラーに使用したテクスチャノードのリンクを下まで必死にドラッグしなくていいんです。幸せ。
内部処理が変わった!
内部処理も変わりました。上図でお気づきの方もいると思いますが、「クリアコート」は[コート]に変わり、「サブサーフェス」「伝播」「コート」「シーン」は[ウェイト]値でブレンド量を指定、「スペキュラー」値は[スペキュラー]-[IORレベル]に変わりました。
下図は各パラメーターの影響を示す図です(公式マニュアルを参考に筆者が作成)。上側の成分が下側のブレンドの後に合成されます。
例えば、「ディフューズ」の層の上に「コート」の層を付け、さらに「シーン」でホコリを乗せるといった表現ができます。
ヘアープリンシプルBSDFノード
ヘアープリンシプルBSDFノードには新しく「Huang」モデルが加わりました(従来のモデルは「Chiang」として継続)。これは人種による髪の毛の断面(楕円の比率)の違いを考慮したモデルで、特に遠距離での表現が改善されるとのこと。
TIPによると、アジア人の断面の比率は0.8から1.0と、真円とそう変わらないので、そんなに違いはないのでは……と思いつつ、以前使用したモデルでテストしてみたのが下図。この程度でもめっちゃ変わって驚きです。
カラーコレクション用の新しいビュー変換「AgX」
「v4.0」で新しいビュー変換が追加されました。
カラーコレクションとは色を補正することです。人間が感知できる色の範囲は非常に大きいですが、現在普及しているディスプレイの大半はそれをカバーできるほどの表現力はありません。
そこで、人がなるべく自然に感じるよう、ディスプレイの表現できる範囲に収めるのが必要があります。「v3.6」までは「Filmic」というビュー変換が利用されてきましたが、これは露出オーバーするような明るい光では色が自然に見えないことがありました。
「v4.0」で追加された「AgX」は、明るい部分の色が飽和して、もっと自然に見えるようになっており、新しいデフォルトのビュー色変換にもなっています。
終わりに
他にも紹介しきれないほど多数の変更・改善があり、「v3.6」以前で作成した画像が「v4.0」では明るく、または暗くレンダリングされてしまうことも少なくありません。
調整の際には、4.0リリースノートが、その一助になると思います。
ではまた。