Windows新標準アプリ徹底解説
音楽に癒されながらガッツリ集中して効率を上げられる「Windows アラーム & クロック」
「Microsoft To Do」連携で作業後に時間配分の見直しも可能な「フォーカス セッション」が追加
2022年5月2日 06:40
Windows 11で刷新されたインボックス(OS同梱)アプリを紹介する本連載。前回はデザインシステム「Fluent」に基づいて刷新された「ペイント」アプリをご紹介した。モダンなアプリに生まれ変わったことがわかっていただけただろう。だが、機能的にはクラシックな「ペイント」アプリをそのまま引き継いだものだった。
この連載で紹介するアプリは、他もデザインのアップデートを基本としている。しかし、中には大きく機能が強化されたものもなくはない。第2回となる今回紹介する「Windows アラーム & クロック」(クロック)アプリはその筆頭ともいえる存在だ。
「クロック」アプリは、あらかじめ指定した時刻になると通知してくれる「アラーム」、カウントダウンを行う「タイマー」、経過時間を計る「ストップウォッチ」世界各国の現地時刻や時差を一覧できる「世界時計」をひとまとめにしたツール。Windows 10時代から存在し、デザインのテコ入れも行われていたが、Windows 11では「フォーカス セッション」と呼ばれる新しい機能が追加されており、改めて注目したいアプリといえる。
なお、「Microsoft Store」では「Windows アラーム & クロック」という名称になっているが、[スタート]画面などでは「クロック」と表記されているので、本稿でもその名前で呼ぶことにする。
フォーカス セッション
「フォーカス セッション」は、時間を区切って作業に集中できるようにしたタイマー。Windows 10にも「集中モード」(focus mode、その前はDo not disturb、非通知モードと呼ばれていた)と呼ばれる機能が搭載されていたが、それをより使いやすくした機能といえる。
効率のよい作業を行うためには、集中力を維持するための環境、適切な休憩時間の設定、作業の目標などが必要となるが、「フォーカス セッション」にはそのための機能が統合されている。
- 指定した作業時間を「セッション」と「休憩」(既定で5分)に分割し、タイマーで管理。合間にはサウンドともにデスクトップ通知が行われる
- セッション中は「集中モード」状態になる。アラームを除くデスクトップ通知はシャットアウトされ、タスクバーのボタン点滅、バッジ通知なども行われない
- 「Spotify」と連携し、「フォーカス」ミュージックを再生できる(要「Spotify」アカウント)
- 「Microsoft To Do」と連携し、セッションとタスクを紐づけられる(要「Microsoft アカウント」)
このように作業時間と短い休憩時間の組み合わせた時間管理は「ポモドーロ・テクニック」としても知られており、集中力を高めて、作業の効率を高めるのに有効だとされている。「フォーカス セッション」はそれに加え、集中力を維持するための環境、作業の目標なども管理してくれるというわけだ。
学校の授業では集中できたのに自宅での勉強では集中できない人、作業中のメールやSNS通知につい気をとられてしまう人、逆に熱中しすぎて休憩をとるのを忘れてしまう人などはぜひ試していただきたい。
フォーカスタイマー
「フォーカス セッション」を利用するには、まず画面左上のタイルにあるアップダウンボタン付きの数値ボックスで全体の作業時間を決める。初期状態では30分にセットされているが、アップダウンボタンを操作すると15分単位で作業時間を増減できる。30分以上の時間を設定すると、それに応じた休憩時間が自動で設定される仕組みだ。たとえば全体の作業時間を1時間にすると、
- セッション1:27分30秒
- 休憩:5分
- セッション2:27分30秒
というメニューになるわけだ。休憩が不要の場合は[休憩をスキップする]というチェックボックスをONにすればよい。ぶっ続けで作業できる。
全体の作業時間を決定したら、[フォーカス セッションを開始します]ボタンを押す。するとタイマーが起動し、プログレスサークルが徐々に減り始める。デスクトップは自動で「集中モード」に切り替わり、通知のない静寂の世界が訪れる。
「クロック」アプリが邪魔であれば、フォーカスタイマータイル右上にあるボタンをクリックしてみよう。コンパクトモードへ切り替わり、デスクトップ右上隅に常に最前面に表示されるようになる。これであなたを妨げるものは何もない。存分に作業に没頭してほしい。
セッションが終了すると、サウンドとともにデスクトップへトースト通知が表示される。作業が早く終われば、[停止]ボタンを押してセッションを早期に切り上げることも可能だ。
なお、「フォーカス セッション」はWindowsがスリープしてしまうと機能しない。PCでの作業であれば問題になることはないと思われるが、他の作業のポモドーロタイマーとして利用する場合は電源の設定(スリープまでの時間)に注意したい。
「Microsoft To Do」連携
効率のよい作業には、その作業のゴール、目標を設定するのが欠かせない。そのためにぜひ試してほしいのが「Microsoft To Do」連携だ。「クロック」アプリを「Microsoft アカウント」に紐づけると、自動で「Microsoft To Do」のタスクが同期され、画面左下のタイルにリストアップされる。タイルから直接「Microsoft To Do」のタスクを作成することも可能。
セッションを開始する前にタスクを選択すると、セッションとタスクが紐づけられる(セッションの開始後はタスクを選択できないので注意)。
この機能の魅力は、どのタスクにどれだけの時間を費やしたのかが記録される点にある。案外早く片付いたタスク、思った以上に時間を使ってしまったタスクが可視化されるのは面白いし、あとで時間配分を再検討する際にも役立つ。
ただし、この情報は「Microsoft To Do」に記録されないようで、複数のデバイスで同期することまではできない。基本的に作業PCが1台だけの人向けといえる。
「Spotify」連携
筆者は静かな状況で仕事をするのを好むが、なかには音楽がないと作業に集中できないという人もいるだろう。その場合は「Spotify」連携を試してみるとよい。
「Spotify」連携を利用するには、Windows版の「Spotify」アプリが必要。初期状態でインストールされている場合が多いが、もしないならば「Microsoft Store」で入手してセットアップしておこう。広告は挿入されるが、利用自体は無料だ。
Windows版「Spotify」アプリがインストールされていると、画面右下のタイルに[Spotify とリンク]というボタンが現れる。このボタンを押すと「Spotify」アカウントへのログイン画面が現れるので、案内に従ってアカウント認証の手続を済ませよう。作業が完了すると、「フォーカス」というBGMプレイリストがサムネイル表示されるだろう。
作業中に「フォーカス」音楽を再生するには、プレイリストを選択した状態でセッション中にフォーカスタイマータイルの[オーディオの再生]ボタンを押す。好みの音楽を再生したい場合は、Windows版「Spotify」アプリで楽曲を再生すればよい。フォーカスタイマータイルの再生・停止ボタンは「Spotify」アプリと連動しており、「Spotify」アプリにフォーカスがない場合でも再生と停止をコントロールできる。
なお、無料で「Spotify」アプリを利用している場合は、当然のことながら楽曲の間に広告が挟まる。「フォーカス」音楽の場合、その頻度は少なく感じられたが(1曲が長いためだろうか?)、気になる場合はプレミアムアカウントへの移行をお勧めする。
このフォーカス セッションはMicrosoftもお気に入りのようで、プレビュー版Windows 11ではOSへのより密接な統合もテストされている。わざわざ「クロック」アプリを起動しなくても、アクションセンターから簡単に利用できるようになるので、より身近な存在になるだろう。
その他の機能
フォーカス セッションの解説が長くなってしまったが、他の「クロック」アプリの機能も一通り紹介しておこう。
ストップウォッチ
経過時間を計る。旗アイコンのボタンはラップやスプリットを測るためのもので、クリックするとストップウォッチを止めずにその経過時間を記録できる。最高速・最低速も一目でわかる。
経過時間を大きく表示するモードやコンパクト表示にも対応するが、その場合ラップ・スプリットボタンは利用できない。