石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

マイクラRTXって今どうなってる? 通常ワールドをレイトレ対応にしてみよう

「Prelude Vanilla」を導入した「マインクラフト」のゲーム画面

「マイクラ」を美しい光の世界で遊びたい

 「マインクラフト」がリアルタイムレイトレーシングに対応したというニュースが流れたのは2020年末のこと。美しい光の表現が可能になり、ゲーム世界が驚くほど美しくなることで注目を集めた。

 このニュースを聞いたプレイヤーは、きっとこう思っただろう。

『私が遊んでいるワールドがすごく綺麗になったらいいな!』

 それから4年以上が経過した2025年1月現在、「マインクラフト」の世界にはさまざまなアップデートがなされたが、外見に大きな変化はない。いったいどういうことなのか、RTX対応とは何なのか、そして通常ワールドを綺麗にするにはどうしたらいいのかをお話ししていく。

対応するGPUやCPUが必要

 レイトレーシングについてざっくり言うと、3D空間で光の挙動を表現する機能だ。何かから発せられた光が、別のものを照らしたり、反射したり、影を作ったりという、現実世界の光の動きをシミュレートするものである。これにより、3Dグラフィックスはよりリアルな表現が可能になる。

 これをゲームなどの3D空間でリアルタイムに処理するのが、リアルタイムレイトレーシング。ただし実現するには膨大な処理能力が必要になるため、特別な機能を持つ高性能なグラフィックス用プロセッサー(GPU)が必要になる。

 NVIDIA製GPUで最初に対応したのがGeForce RTX 2000シリーズで、従来のGeForce GTXという名前から、レイトレーシング対応を示すRTXという名前に改名している。そして「マインクラフト」でのリアルタイムレイトレーシングを実現するためにNVIDIAが協力したことから、「Minecraft with RTX」という名前で発表された。

 現在ではAMDやIntelのGPUもリアルタイムレイトレーシングに対応しているため、「マインクラフト」におけるリアルタイムレイトレーシングの動作対象になっている。またIntel Core Ultraシリーズ1以降や、AMD Ryzen 7000シリーズ以降のCPU内蔵のGPUも対応しているため、この4年間で対応PCはぐっと増えているはずだ。

対応ワールドデータの利用か、リソースパックの適用が必要

 ではなぜみなさんの「マインクラフト」が綺麗にならないのか。「マインクラフト」でリアルタイムレイトレーシングを使用するには、条件があるためだ。

 もっとも簡単な方法は、リアルタイムレイトレーシング対応のワールドデータを利用すること。マーケットプレイスにて、RTX対応ワールドとして無料配布されているワールドが複数ある。これらのワールドを入手し、リアルタイムレイトレーシング対応PCでプレイすればいい。

マーケットプレイスで「RTX」と検索すれば、対応するワールドが複数見つかる

 問題はそれ以外のワールドだ。自分で新たに始めるワールドや、既にプレイ中のワールドでも、リアルタイムレイトレーシングを使用した綺麗なグラフィックスでプレイしたい。それが多くの方の望む形だろう。

 答えは、標準状態の「マインクラフト」では不可能。ただしリソースパックを導入することで実現可能だ。リソースパックとは、新たなキャラクターモデルやテクスチャ、サウンドなどをまとめたもの。改造、あるいは拡張データとでも言えばいいだろうか。

 リソースパックは「マインクラフト」のクリエイターが作成できる。そしてリアルタイムレイトレーシングもリソースパックに含めることができる。つまり、リアルタイムレイトレーシングに対応したリソースパックを、誰かが作って提供し、それを各々のPCにインストールすればいいわけだ。作成に関するドキュメントも公開されている。

 こういったリソースパックは、公式のマーケットプレイスでは見当たらない(あるとしたらアドオンという形だろうか)のだが、外部のWebサイトで独自に公開しているものがいくつかある。

 それぞれに光の表現が異なっていたりするのだが、データを最新版に合わせてアップデートしておらず、一部のテクスチャが正しく表示できないものも多い。その中で今回は、本稿執筆時点ではほぼ問題が見られなかった「Prelude Vanilla」を利用してみよう。こちらは無料で配布されている。

リアルタイムレイトレーシングで生まれ変わる世界。ただし注意点も

「Prelude Vanilla」の配布ページ

 導入手順は、「マインクラフト」の各種データを配布しているWebサイト「クラフターズコロニー」にある、「Prelude Vanilla」のページからファイルをダウンロードする。複数のデータがあるが、今回はベースとなる「Prelude_Vanilla_1.8.1.mcpack」のみをダウンロードした。

ファイルリストの一番上にある「Prelude_Vanilla_1.8.1.mcpack」をダウンロード

 ダウンロードしたファイルを、Bedrock版「マインクラフト」をインストール済みのPCで実行する。「マインクラフト」が自動で起動し、「Prelude Vanilla」のリソースパックがインストールされる。

ファイルを実行すると「マインクラフト」が起動し、インストールされる

 次に「マインクラフト」の設定から、[グローバルリソース]を選択。[マイ パック]の中に「Prelude Vanilla」が入っているはずなので、選択して[有効化]をクリック。すぐ上にある[使用中]の中に「Prelude Vanilla」が入っていれば準備は完了だ。

[マイ パック]から[有効化]する
[使用中]に入ればOK

 本稿執筆時点のリソースパック未適用版「マインクラフト」v1.21.51では、タイトル画面の背景がペールガーデンの薄暗い場所になっているのだが、「Prelude Vanilla」の適用後は木々の隙間から光が差し込んで、ずいぶん雰囲気が変わる。

「Prelude Vanilla」適用前のタイトル画面
適用後は雰囲気ががらっと変わる

 筆者がプレイしているワールドデータを読み込んでみると、そこはまさに別世界。全てのものは明るい光に照らされ、水は美しく透き通り、ガラスには周囲の風景が写り込む。

見るもの全てが美しい。普通の「マインクラフト」とは何だったのかという気持ちになる

 夜にはたいまつの明かりが周囲を美しく照らし、光を発するもの全てが本当に輝いて見える。地下の採掘場ですら美しさを感じるほどだ。

夜の美しさは格別。光るものは何でも綺麗

 ただし、光の表現が通常版とは全然違うものになることによるデメリットもある。光源から少し離れた場所は明るさががくっと落ち、特に他の物の影になる場所はとても暗く表現される。地下での採掘や、夜の野外活動は注意が必要だ。この辺りのバランスはクリエイターの味付けによるものと思われるので、あとは好みで使用可否を決めればいい。

夜は見通しが悪く感じる。採掘の際にも足元がすぐ暗くなるので注意

 「マインクラフト」がアップデートして新たなオブジェクトが追加された場合、リソースパックである「Prelude Vanilla」は勝手に更新されないので、自分で再度ダウンロードして適用する必要がある。制作者がすぐ対応してくれるとも限らないので、表示に問題がある間はリソースパックの使用を一時的に止めればいい。

 リアルタイムレイトレーシングに対応するPCをお持ちの方は、ぜひお試しいただきたい。しばらく「マインクラフト」をプレイしていかなったという方も、これを見ればまたやる気が出るのではないかと思う。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。