石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「マイクラ」の“公式影Mod”こと『Vibrant Visuals』とは? 実際使ってわかったこと
レイトレーシングのRTXとは別物。サーバー運用者は設定変更が必要
2025年6月26日 16:40
『Vibrant Visuals』とは?
「マインクラフト」の世界をより美しくする新機能『Vibrant Visuals(バイブラントビジュアルズ)』が実装された。巷では“公式影Mod”などとも呼ばれており、各種光の表現を導入して映像を美しくする。
美しいといっても、四角いブロックの世界が滑らかな形になったりするわけではなく、本作の持つ世界観を壊したりはしない。本作を知らない方からは『いつまでこのチープな映像なんだ』と言われるだろうが、一度プレイしてしまえば『これでこそマイクラ』と言いたくなってしまう不思議な魅力がある。
『Vibrant Visuals』で世界がどう変わるのかを見ていきつつ、サーバー周りを含めた解説をしていこうと思う。
新たに光の表現を加えた
『Vibrant Visuals』で起こる変化については、公式サイトで説明されているとおり。太陽からの光の表現が加わり、リアルな影が描かれたり、水面に反射したりする。
どちらから光が来ているかが目で見えるようになるので、オブジェクトの立体感も増す。何気なく歩いているだけでも、太陽を背にした時に地面に映る自分の影が、自分の動きに合わせて動いているだけで、ちょっと楽しくなってくる。
たいまつなどの光源も、その周囲がぼやっと光るように見える。実際に照らされている場所も、以前より光が当たっている感じをうまく出している。地下での採掘では、以前より明るく見える部分が広くなった印象で、たいまつの数が少なくて済むかもしれない。
負荷に関しては、ZOTAC製ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIRO」を使用する筆者の環境では、4Kでもかなり余裕がある。最高画質でのプレイに何ら問題はない。
ただ初期設定だと全体的に明るすぎて、視認性は高いが白っぽさが強くなる印象だった。設定の[ビデオ]から[バイブラントビジュアルズオプション]を開くと、[明るさ調整]の項目が出てくる。ここで適切に明るさ調整しておくと、元の明るさに近い(開発者が想定した)明るさでプレイできる。
従来からあるリアルタイムレイトレーシングとは違う
本作では数年前から、リアルタイムレイトレーシングに対応したRTXワールドが公開されている。また有志が制作したリソースパックを導入することで、通常ワールドでもリアルタイムレイトレーシングに対応できる。
では『Vibrant Visuals』はその代わりになるものかというと、完全にイエスと言えるものではない。『Vibrant Visuals』はリアルタイムレイトレーシングを導入するものではないからだ。
リアルタイムレイトレーシングでは、光源となるものから、オブジェクトに反射する光を計算する。それにより、水面の反射だけでなく、ガラスや金属、さらには土や木まで、あらゆるオブジェクトの光の反射が表現される。
これに対して『Vibrant Visuals』は、水面の光の反射表現は加えられるが、ガラスに反射する表現は見られない。その他のオブジェクトも、光が当たっていることは表現されるが、そこから反射した光が別のオブジェクトに影響しているような挙動ではない。
つまり『Vibrant Visuals』は、従来からあるリアルタイムレイトレーシングとは全く別のものである。比較すると、リアルタイムレイトレーシングほどリアルな光の反射表現はないものの、軽い負荷でビジュアルを向上させられる。
見た目の変化はリアルタイムレイトレーシングほど劇的ではないが、それでも従来のビジュアルとは一線を画している。映像品質を格段に高めつつも、それほど高性能なPCを求めず、多くのユーザーに使ってもらえるよう考えられている。
もちろん従来より負荷が高くなるのは確かなので、使うかどうかは各々のPC環境や好みに合わせてで構わない。筆者としてはPC環境に不足はなく、見た目だけでいえばただ綺麗になるだけでなく、採掘などでのプレイ感の向上もあるので、積極的に使っていくつもりだ。
サーバー利用者は設定変更が必要
ここからは話の方向を変えて、本作用のサーバー(Dedicated Server)を自前で用意している場合の注意点をお伝えしたい。
筆者宅では、家庭内LANのWindows PCにサーバーを用意してプレイしている。公式サイトから無料でダウンロードでき、設定ファイルを手直しするだけでマルチプレイ可能なサーバーを用意できる。詳しい設定方法は今回は割愛させていただくが、テキストファイルの編集程度でそう難しくはない。
今回も、以前からプレイしているサーバーで継続プレイするため、サーバーのバージョンアップを行った。ゲームとサーバーのバージョンを揃えておかないとプレイできないので、ゲームのアップデート後にはサーバーのアップデートも必須だ。
早速アップデートしてみたところ、いくつかトラブルがあった。『Vibrant Visuals』に関わるもののほか、基本的な動作に問題も起こった。サーバーのアップデートが3~4カ月ぶりで、その間にあったアップデートが全て影響しているようだ。
まず『Vibrant Visuals』を使用するためには、設定ファイルの『server.properties』の修正が必要。この中に『disable-client-vibrant-visuals』という項目が新たに追加されている。初期状態では『#disable-client-vibrant-visuals=true』となっているため、『disable-client-vibrant-visuals=false』に修正する。行頭の“#”を取ってコメントアウトを解除するのをお忘れなく。
この設定により、当該ワールドをプレイする際にクライアント側で『Vibrant Visuals』をオンにできる。こんな設定項目を作らずユーザーの自由に任せればいいじゃないか、とも思うのだが、例えば競技性のあるワールドなどでは見た目が変わることで有利・不利が発生しうるので、サーバー側でコントロールする機能が必要なのだろう。あるいはRTXワールドでは処理が重複し、見た目を悪化させる可能性がある。
また筆者の環境では、ワールド名を日本語にしている場合、クライアントで表示される文字が化けてしまい、クリックしてもワールドに入れないトラブルが起きた。
文字コードをShift-JISからUTF-8にするなどしてもうまくいかず、最終的に『server.properties』の『level-name』と、ワールドデータ内にある『level.dat』および『level.dat_old』の中にあるワールド名を、どちらも日本語を使わないアルファベットの名前に変更した。
なお『level.dat』と『level.dat_old』はテキストファイルではないので、バイナリエディタで編集するのがいい。「マインクラフト」向けのNBTエディターを使うのがおすすめという話も聞くので、この辺りはお好みで。この作業内容はかなり力技で、より適切な手続きがありそうだが、今回は時間がなく暫定対応した形だ。
さらにフォルダー構成の変更も必要で、[worlds]フォルダーの下に、『server.properties』の『level-name』で指定した名前のフォルダーを作成し、元々[worlds]の直下にあったファイルをそのフォルダーに移動させた。こうしないと新たなワールドが生成されてしまい、従来のワールドでプレイできなかった。
この後サーバーログを見ると『AppCertificate.pfxがない』という警告が表示されていた。これは証明書ファイルを求める処理に失敗したことを示しており、Microsoftアカウント認証を用いる場合には問題が出るかもしれない。筆者はLAN内のプレイで認証を使っていないためプレイに問題がなく、警告を放置している。問題が出た時にはサーバーログを確認し、証明書ファイルの取得を試してみるといいだろう。
ちなみに上記の内容を含む本作のサーバー設定に関しては、Copilotに聞くととても丁寧に教えてくれる(全てが完璧な答えではないが、ヒントには十分)。さすがはマイクロソフト製品である。筆者はこの回答を見て「Copilot for Gaming」への期待が高まった。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。