Chromebookって何?

第3回

PWAもAndroidアプリも使える! さらに“奥の手”Linuxアプリをインストール可能

Chrome アプリはPWAに進化。Androidアプリは「Google Play」からインストールできる

「Chrome OS」の“ランチャー”

 ChromebookとそのOS「Chrome OS」について解説する本連載。3回目となる今回は、実際に「Chrome OS」で利用できる「Google Chrome」以外のアプリを紹介する。

Chrome アプリ→PWA

 近年のWebプラットフォームの進歩は著しく、私たちが日常的に行う作業の多くはほぼWebで完結するようになった。メールを読み書きしたければ「Gmail」を開けばよいし、オフィスアプリを使いたければ「Microsoft 365」や「Google ドキュメント・スプレッド・スライド」がある。チャットやビデオ会議もWebブラウザーで十分だし、お絵かきやゲームも今や多くがWebアプリケーションで楽しめる。つまり、「Google Chrome」さえあればほとんど事足りるようになったわけだ。

 しかし、「Gmail」や「Microsoft 365」といったWebアプリケーションを「Chrome」のタブで開いていくと、バーがあふれてタブがノコギリ状になり、切り替えが面倒になる。また、ウィンドウを丸ごと閉じてしまう危険もあるだろう。そして何より、1つのアプリは1つのウィンドウになってほしいものだ。WindowsやMacでユーザーはそうした世界に慣れている。

 そこで、「Chrome OS」には“Chrome アプリ”という仕組みが用意されていた。これはWebページをあたかもアプリケーションのように独立したウィンドウで使えるようにしたもので、WindowsやMac、Linuxの「Google Chrome」にも対応していた。

「Chrome OS」に同梱されているメモアプリ「Keep」。Webアプリケーションをウィンドウで動かせる“Chrome アプリ”だが、PWAへの移行が進められている

 しかし、この仕組みは廃止が決定しており、段階的に縮小されている。

 とはいえ、“デスクトップアプリのようにふるまうWebアプリケーション”というコンセプトは滅びたわけではない。代わりに“プログレッシブ Web アプリ(PWA)”という仕組みが「Firefox」やスマートフォン環境も巻き込んで標準化されており、今後はこれが主役となる。「Chrome OS」「Google Chrome」で閉じた仕組みを、モダンなWeb標準技術で再構成したのがPWAと言っていいだろう。

 PWAという言葉を耳にしたことがない人も少なくないと思われるが、すでにPWA化されているWebサービスは少なくない。たとえば「Google Chrome」で“outlook.com”を利用してしばらくすると、アドレスバー右端に“+”を丸で囲んだインストールボタンが現れる。これをクリックすると“outlook.com”が「Chrome OS」にインストールされ、独立したウィンドウを持つアプリのように利用できる。「Spotify」をPWAとして追加したければ、“open.spotify.com”にアクセスしてみればよい。

「Keep」をPWAとしてインストール

 Webアプリケーションをそのまま「Google Chrome」で使ってもかまわないが、もしそれがPWAに対応しているのならば、ぜひインストールして使ってみよう。単にブックマークするよりも、便利に使えるはずだ。

Androidアプリ

 「Chrome OS」は名前の通りWebブラウザー「Google Chrome」に特化したOSだが、実は2016年以降、Androidアプリにも対応している。職場や学校のデバイス管理者側で禁止されていたり、古いデバイス・非対応デバイスでは使えないこともあるが、基本的に2019年以降のデバイスであればどのデバイスでも利用できるはずだ(詳しくはサポートデバイスの一覧を参照のこと)。

最近のChromebookはAndroidアプリにも対応。「Google Play」ストアアプリからインストールできる

 Androidアプリの導入は、Android搭載スマートフォン・タブレットと同様で、ストアアプリ「Google Play」から行う。Web(PWA)版よりAndroid版の方が使い勝手がよかったり、Android版の方が高機能なアプリ、そもそもAndroid版しかないアプリであれば、この方法でChromebookへ追加してしまうのも手だ。実際、プリインストールされている「Gmail」アプリなどはPWA版ではなくAndroid版の方だ。

Web(PWA)版よりAndroid版の方が使い勝手がよかったり、Android版の方が高機能なアプリ、そもそもAndroid版しかないアプリは「Google Play」ストアアプリから追加してしまおう

 Facebookの「メッセンジャー」アプリなどは、Androidでおなじみのチャットバブルにも対応している。ほぼAndroidと同じ使い勝手になっているといってよいだろう。

Facebookの「メッセンジャー」アプリなどは、Androidでおなじみのチャットバブルにも対応

PWAか、Androidアプリか?

 PWAアプリとAndroidアプリの両方が用意されている場合、PWAアプリの方が若干リソース消費が少ない。その一方で、Androidアプリの方が機能で勝る傾向があるようだ。

 もっとも、最近は同一のソースコードからWeb(PWA)アプリとAndroidアプリをビルドするソリューションもある。そのため、両者に機能差がない場合も少なくない。また、PWAも「Google Play」ストアに掲載されていることもあり、Androidアプリをダウンロードしたつもりが、実はPWAを使っていた――なんていうケースもある。

 たとえば、Chromebookで「Google Play」ストアアプリからインストールできる「Twitter」アプリは、実はAndroid版ではなくPWA版だ。“twitter.com”からPWAを追加しようとすると「Google Play」アプリに飛ばされるが、インストールしたアプリのウィンドウのタイトルバーを右クリックすると[ブラウザ ウィンドウを開く]などのコマンドがあることなどから、PWA版であることがわかる。

Chromebookで「Google Play」ストアアプリからインストールできる「Twitter」アプリは、実はAndroid版ではなくPWA版

 PWAの強化により、Androidアプリとの差は徐々に縮まっている。現在は未対応のアプリ内購入やサブスクリプション契約もいずれはPWAで可能となる予定。今後はAndroidアプリとPWAの区別はなくなっていくのだろう。

Linuxアプリ

 Webサイト、PWA、Androidアプリが使える「Chrome OS」。死角はなさそうにみえる布陣だが、それでも不利な分野は残っている。たとえば、高度なフォトレタッチツールやフルスペックのオフィススイート、アプリの開発環境などだ。Webプラットフォームの進化により、こうした分野にもWebアプリケーションが進出しつつあるが、こうした分野まで一般にカバーされるのは当分先だし、一部の先進アプリはデスクトップOSから実装されるものだ。「Chrome OS」で利用できるまでには、どうしても少し待つ必要がある。

 しかし、「Chrome OS」には奥の手が残されている。それがベータ版として提供されているLinux環境だ。あまり入門ユーザーにお勧めできる機能ではないが、Linuxに慣れたユーザーであれば「GIMP」や「LibreOffice」といった重量級アプリを導入するのも不可能ではない。正式なサポートを表明している「Android Studio」のようなツールも存在する。

Chromebookで動作している「Visual Studio Code」

 もし挑戦したい人がいるなら、以前に「Visual Studio Code」のインストールを紹介したことがあるので、それを参考にしてほしい。

 最終回となる次回は、すでにWindowsパソコンを所有しているユーザー向けに相互運用の勘所を紹介したい。単体でも十分役に立つChromebookだが、Windowsパソコンとの連携を抑えればさらに便利に使えるはずだ。