トピック
3Dモデリングソフト「Blender」でVTuber級モデルを作る!知識ゼロでもイケるポイントは?
1,400ページの無料解説書やPC選びのポイントも!~クリエイター向けノート「DAIV」でテスト~
- 提供:
- マウスコンピューター
2021年7月9日 06:55
3Dキャラクターモデラーになってみませんか?
突然ですがはじめまして。「深層の3DモデラーK」と申します。
VTuberやその他の3Dキャラクターモデルの作者として日々黙々と制作研究にいそしむ私ですが、このたび縁あって、最新のクリエイター向けノートPCと「Blender」についてお話することになりました。
VTuberが語られる時、アクター(演者)がよく注目されますが、実はその存在は3D的な技術の集大成です。実際には、制作から運営まで様々なスタッフの力で成り立っています。
そして、その裏方たちの中でも特に、姿なきVTuberたちに「受肉」させる立役者が3Dキャラクターモデラーと言えます。美しい、親しみやすい、かわいい、かっこいい……個性的なキャラクターたちが仮想空間で存在するための「肉体」を作り出す、3D世界のクリエイターというわけです。最近では、消費者として楽しむだけでなく、そういった創作の世界に挑戦してみたいと考える皆さんも多いのではないのでしょうか?
でも、3Dモデリングって難しそうだと思われるかもしれません。それは事実です。見えないところまで気を配る必要がありますし、魅力的なキャラクターを3Dで実現するためには様々な技術要素を把握する必要もあって、たくさんのことを学ばなくてはなりません。
その一方、3Dを支える技術やアプリ、PCなどが大きく進歩し、ハードルはかつて無いほど下がっています。
ツールとしては、私も使っている無料の3DCGモデリングソフト「Blender」がとても強力ですし、作業に使うPCも、普及価格帯のものが非常に優れた3D性能を提供してくれるようになりました。
そこで大事なのは「3Dキャラクターを作りたい!」という強い思い。それさえあれば、いまや誰でも3Dクリエイターになれることをここに保証しましょう。
というわけで、私、「深層の3DモデラーK」が3Dキャラクターモデリングの世界にご招待します。
入門のポイントから、プロのノウハウの一端まで、幅広くご紹介しますので、気になる方はぜひ参考にしてください。
▼無料の「Blender」とノートPCでスタートできる!
▼解説書も無料、 基礎から髪の毛の動きまで1,400ページ
▼深層のモデラーK流、「Blender」キャラクター制作のポイント
❶ 頂点の調整こそが作家性に、作業頂点削減のワザ
❷ 衣服のモデリングは「クロスシミュレーション」で
❸ あまり絵心がなくても……テスクチャの下絵を自動生成
❹ 自作シェーダーでの常時プレビュー
▼想像以上に好感触なクリエイター向けノートPC!モデリングには性能充分
▼高度な3D制作環境が簡単に整う時代!
「深層の3DモデラーK」
フリーランスの3Dモデラー。キャラクターモデリングを専門にする「Blender」使いで、数々のVTuber、その他の3Dモデル制作に携わる。
もともとは全く別の生業をしていたが、あるとき突然モデラーに転身。本格的に修行をはじめてから半年後に制作担当したキャラクターモデルは、後に視聴者10万人級のVTuberに成長した。モデル製作のほか「Blender」アドオン開発なども行なっている。
プロも活用する無料のモデリングソフト「Blender」を「クリエイター向けノートPC」で利用してみる!
3D制作には、まずPCが必要です。なにもないところから3Dキャラクター制作を始めようという方には、いろいろとセット買いしないといけないデスクトップPCよりも、最小限の調達で済むノートPCでの環境構築がおすすめ。
タッチパッドでは正確な操作が辛いので、操作環境としてマウスだけはゲーミング級のマウスを追加で調達したほうがよいですが、それでもノートPCなら本体だけでひととおりのことができ、すぐに始められるのが魅力。「やる気があるのにPC環境の構築でつまづいてしまう」なんていうのは、もったいないですからね。
しかし「本当にノートPCで3D制作ができるのかいな?」と思う人も多いハズ。今回は、そこをしっかり検証しました。
今回、テスト用環境として用意したのは、マウスコンピューターのクリエイター向けノートPCシリーズの最新モデル(2021年6月発売)である「DAIV 4P」と「DAIV 4N」。
- 【CPU】インテル® Core™ i7-1165G7 プロセッサー
- 【GPU】Intel Iris Xe グラフィックス
- 【メモリ】16GB(BTO対応)
- 【ストレージ】M.2 SSD 512GB(BTO対応)
- 【ディスプレイ】14.0型 1,920×1,200ピクセル
- 【Wi-Fi】IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n
- 【バッテリー動作時間】約12時間
- 【重量】約985g
- 【CPU】インテル® Core™ i7-1165G7 プロセッサー
- 【GPU】GeForce GTX 1650 Ti
- 【メモリ】16GB(BTO対応)
- 【ストレージ】M.2 SSD 512GB(BTO対応)
- 【ディスプレイ】14.0型 1,920×1,080ピクセル
- 【Wi-Fi】IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n
- 【バッテリー動作時間】約11時間
- 【重量】約1.43kg
どちらも画面サイズは14インチで、かばん等で楽に携帯できるサイズ。重さは985g(DAIV 4P)または1.43kg(DAIV 4N)で、DAIV 4NはGPUにNVIDIAのGeForce GTX 1650 Tiを搭載、さらに3D性能を高めています。
そのほかのスペックは似ている部分も多く、CPUはインテルの最新モバイルプロセッサー「Core i7-1165G7」を搭載、標準のメインメモリは16GB、ストレージは512GB(NVMe SSD)など。性能とコストパフォーマンスの両立を狙った製品といえるでしょう。OSはWindows 10 Home。
なお、メモリとSSD、OSは購入時のオプションとして変更でき、今回は「Blender向けのカスタマイズ」としてメモリ容量を32GBに、SSDをM.2 PCIe Gen4 x4接続の1TBモデルにしたものを使用しています。特に、SSDがM.2 PCIe Gen4 x4接続になっているおかげで、ノートPCとは思えない………というか、普通のデスクトップPCを超える、とても高速な読み込み・書き込みが可能になっています。
「Blender」自体にはそんなにいらないのですが、同時に「Photoshop」による高解像度テクスチャーの編集や、「Unity」等各種のゲームエンジン系開発環境を並列起動してアプリに組み込む作業などの際に、メモリやストレージに余裕があると安心できると思います。
価格はDAIV 4Pが15万3780円(税込)から、DAIV 4Nは15万9280円(税込)から。少し気合を入れれば多くの人に届く、普及価格帯のクリエイター向けPCと言えるでしょう。
ちなみに、シリーズとしての「DAIV」がなぜ「クリエイター向け」なのかというと、価格対性能比の高さを重視しているのはもちろん、画質や発色域を重視した液晶ディスプレイの採用や、クリエイターが快適に利用できるスペックやインターフェイスがポイント。
さらに、無駄な情報を省いてシンプルに美しくまとめた筐体デザインも「クリエイター向け」を意識したものになっています。いずれも、創作の内容に集中するために必要なことです。
ハードを整えたら今度は「Blender」をインストール
ハードウェアは以上として、ソフトウェアの準備は、これらのPCに「Blender」をダウンロード・インストールすればおおよそ完成です(「Blender」は窓の杜からもダウンロードできます)。
ピカピカのPCを箱から出して電源をつないで起動、Windowsの初期設定をして、「Blender」をインストールして3D作業を開始するまで、当方でかかった時間は10分少々。これがデスクトップPCなら、本体・モニターを設置して、各種周辺機器をつないで、などいろいろとくたびれる作業が増えて意欲が削がれそうになりますが、そうなる前に実作業に入れるというのは、こういったノートPCのいいところだと思います。
私がメインツールとして使っている「Blender」は、ポリゴンを組み立てて形を作る作業(狭義のモデリング)から、テクスチャー制作、ボーンを入れて動かせるようにする(リギング)、マテリアルやシェーダーといった見た目の調整、アニメーションの制作、レンダリング、各種アプリ向けの出力まで、3Dキャラクター制作に必要な機能が全て整っているすごいツールです。
機能の中身も他の高額なツールにひけをとっておらず、一部機能は「Blender」の独壇場というものさえあります。さらにはオープンソースコミュニティが日々進化させる豊富なアドオン機能もあり、「できんことはない!」という強力さ。無料なのにすごい、というよりも、無料だからこそすごい、の域に突入しているツールなんですね。
というわけで「Blender」だけ入れてしまえば、3Dキャラクター制作に必要な、ほぼすべてのことができるようになります。
実際にはターゲットアプリ(「Unity」など)でのセットアップも必要になるので、モデルが完成する頃には「Unity」や「Unreal Engine」などの「実行環境となるもの」も入れていくことにはなります。とはいえ3Dモデルを作るだけなら本当に「Blender」だけで大丈夫。進みましょう。
【ゼロから始めるなら】無料の解説書を活用しようインストールや視点変更、ボーンの操作、髪の動きまで1400ページ!
本当にはじめて3Dを触る、という方であれば、まず「Blender」の基本的な操作を学ぶことになるでしょう。
これはけっこう骨が折れますが、慣れてしまうまで頑張れば、あとはスイスイ扱えるのが「Blender」の良さでもあります。がんばってみる価値はありますよ。
基本設定や操作方法についてはWeb上にもいろいろな資料・文献がありますが、無料で配布されている和歌山大学のCG制作演習で使われたPDF資料では、何もわからない状態でもステップ・バイ・ステップで基本的なモデル制作ができる内容を網羅しています。「Blender」をはじめて触る学生へのオンライン実習向けに作られた資料なので、懇切丁寧で間違えようがない内容になっています。
インストール方法から始まり、日本語化・視点移動・モデルの移動・モデルの変形といった基本操作から、さまざまな基本形状の作成方法、ライティング、テクスチャーの貼り付け、ボーンの入れ方・動かし方などが1手順ずつスクリーンショットで解説されています。物理演算による固体・液体の動きや、髪の毛の動きのシミュレーションなど「Blender」ならではの機能も網羅されており、最終的にはアニメーションを作成するところまで学べます。
この解説書に書かれた指示に従うだけで、ちょっとした3Dモデルを作ったり動かしたりできるので、はじめての方はいちど見ながら真似してみるということをおすすめしておきます。とりあえず真似したら何かできた、という経験をしておくと、その後の学習が大変スムーズになります。
深層のモデラーK流、「Blender」キャラクター制作のポイント
ひとまず基本中の基本は押さえた上で、実際に歌って踊れるような3Dキャラクターモデルに到達するには、さらに様々なノウハウの習得が必要です。
やり方は人によっても違いますし、全てはとても説明しきれませんが、ここでは一つの目安として、私、深層の3DモデラーKが日頃やっているモデル制作作業のスタイル、ワークフローを4つのポイントで紹介したいと思います。
説明に使うのは男性型のテスト用モデル。個人的には女性型モデルのほうを数多く作っているのですが、技術的にはだいたい同じような作り方でこちらの男性モデルも制作しています。
❶頂点こそが作家性に、作業頂点は「モディファイア」で削減
良いモデルを作るには、形状に対するたくさんの試行錯誤が必要です。
重要なのは「あるべきところにあるべき頂点があるか」ということで、最終的には1頂点ずつ調整していきます。大事な部分は何度も再調整を行なうことも多いです。これによって作られるポリゴンの形状が3Dモデルで魂となる部分であり、作家性が出るところでもあります。
しかし、これが頂点数の少ないローポリモデルなら試行錯誤もしやすいのですが、ある程度頂点数の多い、ハイポリゴンのモデルになってくると、手動で調整すべき頂点が多くなりすぎ、手に負えなくなります。なので、制作はローポリで、出力はハイポリで、という方法をとれれば理想的です。
具体的には、左右対称の部位はミラー生成、曲面的な部分は自動生成、表裏のあるものは自動で厚みをつける……といったように、自動生成できる頂点はできるだけ自動生成し、直接触る頂点をできるだけ減らします。
これを実現するのが、「Blender」の基本機能である「モディファイア」です。
簡単にいうと、生のポリゴンデータ(メッシュデータ)に対して、アルゴリズム的に頂点を生成したり、変形する「作用」を付け加える機能です。「Blender」には数十種類のモディファイアがあり、中でも次のようなモディファイアをモデリング時に活用すると作業量を軽減できます。
- ミラーモディファイア:面対称の頂点を生成する
- 細分割曲面モディファイア:頂点を生成し面を滑らかにする
- 厚み付けモディファイア:面の「裏面」および「ふち」を生成する
これらを活用したポリゴンオブジェクトの頂点は、ミラーで2倍、細分割曲面(1段階)で4倍、厚み付けで2倍になります。例えば左右対称の厚みある衣服であれば、これらを組み合わせて「ミラー+細分割曲面+厚み付け」で2×4×2、合わせて16倍の頂点になりますね。つまり、「目に見える形状の、16分の1の頂点」だけ編集すれば良いわけです。
特に細分割曲面は見た目の綺麗さなどでメリットが大きいのですが、一方で「編集時の動作が重くなる」「エクスポート可能な完成状態にする際にいろいろと特殊なことをする必要が出てくる」などの扱いづらさもあり、これを常用してリアルタイム向けのキャラクターモデリングをしている私のようなモデラーは少数派です。
とはいえ、比較的少ない頂点に対する作業量で綺麗な輪郭のモデルデータを作りやすくなるため、造形に関する試行錯誤を増やすことができます。
❷ 衣服のモデリングは「クロスシミュレーション」で効率よく
リアル寄りの体格や衣装を制作する場合、衣装もリアル感のある形状にしたいことは多いと思います。そこで「Blender」の物理シミュレーションシステムのひとつであるクロスシミュレーションを使います。
まず衣装の基礎形状素をシンプルな板や円筒を組み合わせて作り、クロスシミュレーションにかけることで体の形状に合わせてしわ等が入ったリアルな衣服の形状を得ることができます。この処理は非常に重たく、必ずしも狙った通りの形状ができるとは限りませんが、使い所を考えれば非常に効率的に衣装製作ができます。
❸ 絵心が足りなくてもOK!テクスチャは「生成」しよう
ポリゴンに貼るテスクチャ画像を作るときに、ゼロから色を塗るよりも、下絵的なものを自動生成したほうが良いことは多いです。
私はこのために、「Blender」のレイトレースエンジンである「Cycles」レンダラーの「ベイク」(焼き付け)機能をよく使います。通常のビューポート表示はリアルタイムレンダラーである「Eevee」で行ないますので、私の場合、Cyclesレンダラーの使いみちはテスクチャのベイクがメインです。
肌や布の基礎的な色と陰影ならば、非常にシンプルなシェーダーノードを組むことで作り出せます。細かい色の変化や模様などはテスクチャペイントモードであとから加えることになりますが、あらかじめ陰影が書き込まれているので、明るさはそのまま色だけ変えればいい(カラーペイント)というシンプルな作業になります。
この方法を使えば、私のようにあまり絵心がない人でもなかなか説得力のあるテスクチャ画像を作ることができます。絵心を要する作業が減る代わり、Cyclesレンダラー用のマテリアルをセットアップする手間と知識は要求されますが、やりかたがわかってしまえば誰でもできるというのがポイントですね。構造が複雑な部分に使うと特にありがたみが増すと思います。今回の例では靴紐まわりなどがそうですね。
❹ 自作シェーダーでの常時プレビュー
「Blender」のウィンドウ内でメインの作業領域となる3Dビューポートでは、モデルを様々なプレビューモードで表示できますが、モデルが完成して3Dアプリ等で動いている状態の質感で表示できれば、より具体的なイメージに寄せつつ精度の高いモデリングがしやすくなります。
「Blender」のビューポートレンダラーのひとつである「Eevee」は「Unreal Engine」の実装をベースに開発されたリアルタイムレンダラーで、シェーダーノードをいじることで柔軟な見た目を再現できます。
リアル系の表現を前提としたレンダラーなので、アニメ系の見た目はやや苦手なのですが、私のワークフローではそのあたりを解決した自作シェーダーノードを使い、ビューポート表示に使っています。
制作したモデルは「Unity」や「MMD」といったリアルタイム3Dアプリケーション上で動かすことが多いので、その時の見た目をイメージできるシェーダー設定で常時プレビューしつつ制作をしています。ツール上とターゲットアプリ上での見た目の違いが少ないことで、より実質的な試行錯誤に集中できます。これにより、完成モデルのクオリティが一段と上がるのではないでしょうか。
「シェーダーを自作する」というのは誰もができることではないですが、得意分野に応じて「こういうこともできる」ということは知っていて損はないと思いますし、様々な人が自作シェーダーを配布していますので、そうしたものを選んでみるのもいいでしょう。
以上、深層の3DモデラーKこと、私の基本的なやりかたについて説明しました。他の一般的なキャラクターモデリング手法に比べると、動作の重いモディファイア等への依存度が高い方法だと思います。そのかわり、造形センスや絵心が少々物足りなくてもそれなりにいい感じの3Dが作れる、というコンセプトを体現しているやりかたです。
いつもはそこそこハイスペックなCPU&GPUを搭載したデスクトップPCで制作をしていますが、今回皆さんにご紹介するノートPC、「DAIV 4P」と「DAIV 4N」では同じような方法で快適に作業できるでしょうか? 引き続きそのあたりの体感について述べてみたいと思います。
想像以上に「使える」クリエイター向けノートPC、基本作業は全く問題ナシ、DAIV 4NならデスクトップPC並みの体感も
結論からいうと、内蔵グラフィックスの「DAIV 4P」、GPU搭載の「DAIV 4N」のどちらも、基本的な作業で困ることはないレベルで動作してくれます。
基本的な作業というのは、たとえばポリゴンモデリングをしたり、視点をぐるぐる動かして造形を確認したり、リギング済みのキャラクターにポーズをつけて静止画をレンダリングしたりといった作業です。
内蔵グラフィックスでも想像以上の快適さ
特に基本となる視点操作、これが不快なほど重いようであればその環境は失格ですが、インテル Iris Xe グラフィックスを使う「DAIV 4P」でもその水準は大幅にクリア。
細分割曲面モディファイアを使ったハイポリゴンなモデルでも、「ソリッドモード」などの描画負荷が軽量なモードで特にスイスイと操作できます。「最新世代のインテル内蔵グラフィックスはかなり性能が向上した」と聞いてはいましたが、これは期待以上でした。
GPU搭載モデルなら、デスクトップPC並みの操作感
GeForceのGPUを搭載した「DAIV 4N」のほうに至っては、描画負荷が高まる「マテリアルプレビュー/レンダリング」ビューモードでも私が日頃使っているデスクトップPC環境(ミドルハイクラスのゲーミングPC相当)とほとんど変わらない操作感が得られて驚きました。
このモードでは、最終的に出力されるイメージにごく近い状態で精度高く各種作業ができるので、これが軽いかどうかはわりと重要です。
内蔵グラフィックスの「DAIV 4P」のほうではややレスポンスが低下するので、価格差が5,000円程度ということもあり、リッチな見た目の3Dキャラクターを作りたい方は「DAIV 4N」をファーストチョイスとするのがよいでしょう。
また、「細分割曲面モディファイア」などの重めのモディファイアをつけた状態での各種作業はかなりのCPUパワーが求められるのですが、これについてはどちらも十分に優れた動作パフォーマンスを示してくれました。
たとえばポーズをつけるためにボーンを動かすときに、CPUパワーが足りないと操作レスポンスが異常に悪くなります。そのあたり、「DAIV 4P」「DAIV 4N」の双方で操作性が損なわれることがなく、十分に実用可能であることが感じられました。シングルコア性能の高い第11世代のインテル製CPUを搭載していることで、処理上のボトルネックがかなり軽減されていると思われます(「Blender」では、モディファイア関連の多くの処理はシングルスレッドで行われます)。
モデリングには性能充分な「クリエイター向けノートPC」
ということで、両機種ともひととおりのことがつつがなくできてしまいました。
つまり、私が日頃デスクトップPCで制作している、わりとリッチな3Dキャラクターモデルは、これらのノートPCでも同様に制作可能、というわけです。
また、GPU搭載型の「DAIV 4N」のように十分な3D性能があるノートPCなら、「Blender」でモデル製作をするのみならず、「Unity」上でモデルを動かして配信するといった、運用部分まで完全にカバーできます。
制作から運用まで、ひとつの環境で完結できるというのは魅力的ですね。しかも、モニター上面のフェイスカメラでバストアップのパフォーマンスキャプチャーができるので、VTuberとしての配信にも追加のハードウェアが不要です。こういう細かいところで「すべて入っているノートPC」のメリットが生きてくると思います。
なお、何百もの画像を連番でレンダリングするアニメーション制作にも手を出すなら、いずれ高性能なデスクトップPCも必要になると思います。何しろ必要な計算量が桁違い。でも、デスクトップPCを1日がかりのレンダリングにかけている最中に何もできないよりは、その間、このようなノートPCがあれば別の作業ができるので、適材適所ということです。ちなみに、DAIVシリーズにはもちろんデスクトップPCも用意されています。
高度な3D制作環境が簡単に整う時代!
適材適所、その役割を十全に果たしてくれるノートPCが、普及価格帯で手に入るようになったことは本当に驚くべき進歩だと、個人的には思います。
特に今回触った「DAIV 4P」「DAIV 4N」のようなノートPCは、クリエイター向けモデルということで、余計なものをつけずに基本性能を高めることに集中した、という風味が強く漂っていて、ひとりの3Dクリエイターとして非常に印象が良いです。CPUやGPU以外の点でも、過度な装飾がなく落ち着いたデザインの筐体や、余計な映り込みがないノングレアタイプで、LEDバックライトでクッキリとした発色の液晶パネルなど、制作面に必要な特徴をきちんと盛り込んでいる点も大切なポイントだと考えます。
どちらのモデルも外部ディスプレイを接続でき、DAIV 4Nでは最大2系統(HDMIとThunderbolt 4)、DAIV 4Pでは最大3系統(HDMIとThunderbolt 4、USB Type-C)、Thunderbolt 4やUSB Type-Cはデイジーチェーン接続にも対応します。本体液晶と合わせて最大4画面に出力できるので、これらをつなげてマルチディスプレイ・疑似デスクトップPCとして使うのもいいですね。特にテスクチャ作業、レンダリング後のコンポジット作業をするときなどは、出力結果を別の画面に出しつつ、メイン画面で各種の作業をする……といった運用で作業効率がぐっと高まりますので、モデル製作に慣れてきたら、いろいろと環境を拡張していくのもいいと思います。
そういった拡張も含め、今回触ったノートPCは母機として十分な能力を持っていると思われます。できないことはほとんどありません。だからこそ、はじめに言ったことをもう一度繰り返しましょう。大事なのは3Dキャラクターを作りたい!という強い思い。環境は簡単に整いますから。
老いも若きも、必要なのはやる気だけ。クリエイターへの扉は大きく開かれていますよ!