Blender ウォッチング

無料の「Blender」でVTuberモデルの衣装をカスタマイズしてみよう!

3Dモデルの服だけに直接絵を描けるようにする

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

 以前、特集記事としてVRMファイルのインポートと編集(袖の削除)、エクスポートの方法をお伝えしましたが、今回はその続きとして3Dモデルにペイントを行う「テクスチャペイント」機能を利用し、服に「ペイント」してみたいと思います。前回やけに白い服だと思った人は鋭いっ!

今回の目標

作業ファイルと「Blender」について

 作業には前回の講座が終了した時点の、インポートやモデルの編集などが終わったファイルを用意してありますので、そちらを使用してください。

サンプルBLENDファイルのダウンロード

 皆さんがこのようにモデルを.blend形式で配布する場合は、パック(同梱)されたテクスチャファイルに「ユーザーパス」が入っていないか確認してください。詳しくは一番最後の「VRMインポートの追記」をお読みください。

 「Blender」のバージョンは前回同様「Blender 2.93LTS」を使用します。

 最初に各種ストアへのリンクが表示されますが、そこからインストールしたくない方は、もう少し下にDownloadリンクがありますので、そちらを利用してください。

download.Blender.orgのダウンロードページ

 インストール方法などにつきましては、前回を参照してください。

テクスチャペイントの準備

 「Blender」を起動し、作業ファイルをドラッグ&ドロップするなどしてファイルを開き、すでに「体オブジェクト」が選択状態にあることを確認します。

 まず最初に、ペイント対象の「マテリアルスロット」(オブジェクトの質感を決めるスロット)を設定します。

 画面中央上部にあるワークスペース(画面のレイアウトと設定を用途別に設定した物)の下の[シェーダーエディター]のヘッダーにある「Slot2」と表示されている部分をクリックし、表示されたリストの上から2番目の[F00_002_03_Tops_01_CLOTH]を選択します。

図の「Slot 2」→[F00_002_03_Tops_01_CLOTH]の順でクリック

 次にワークスペースを現在開いている[Shading]ワークスペースからテクスチャペイント用のものに変更します。上部の[Texture Paint]タブをクリックしてください。

上の[Texture Paint]タブをクリック

 下図がワークスペース切り替え直後です。表示が小さくて作業しづらいため、マウスホイールの回転や、[3Dビューポート]の[ナビゲートギズモ]で表示をズームしておいてください。

切り替え直後の[Texture Paint]ワークスペース

「Texture Paint」ワークスペースについて

 [Texture Paint]ワークスペースは、下図のように、左から[画像エディター]、[3Dビューポート]、[プロパティエディター]の3つのエディターが並んでおり、[テクスチャペイント]モードになっています。

[Texture Paint]ワークスペースと各部名称

ペイント部分のマスキング

 現時点で、とりあえず[3Dビューポート]からペイントできる状態にはなりましたが、前回でも少し触れたとおり、このモデルは胴体と衣服が同じオブジェクトになっているため、そのままペイントすると両方が影響を受けてしまいます。

こんなことになるかもしれません(例)

 そのため、衣服の部分のみを選択し、ペイント範囲を制限します。

 衣服部分の「面」の「UV座標」が左側の[画像エディター]に表示され、わかりやすくなるという利点も付いてきます。
(※UV座標:画像内の各面に貼り付ける位置を示す座標)

 [Tab]キーを押すか、右側の[3Dビューポート]左上から[編集モード]に変更します。

囲み内をクリックして編集モードにします
編集モード

 [3Dビューポート]で上下の衣服の上にマウスカーソルを置き、それぞれで[L]キーを押します。これは前回にも行いましたね。

 リボンはお好みでどうぞ。途中間違えて胴体を選択してしまった場合は、[Ctrl]+[Z]キーで元に戻してやり直してみてください。

クリックではなく[L]キーを押すことに注意

 再び[Tab]キーを押すか、[3Dビューポート]左上から[テクスチャペイント](テクスチャ...になっていますが気にしないでください)に変更し、その隣にある四角形のアイコンをクリックしてONにすれば、マスク設定は完了です。もし解除したい場合は再びこのアイコンをクリックしてOFFにしてください。

テクスチャペイントモードに戻り(左)、四角形のアイコンをクリック(右)

 下図のように、マスキングされてペイントできない部分は白く表示されるようになります。

画像エディターのテクスチャ画像にも「辺」が表示されていることにも注意。ちなみに右上と左上は前回削除した「肩」の部分のテクスチャ

 [3Dビューポート]で服の上に何か描くと、左側の[UVエディター」内の画像にも反映されるのが確認できるはずです。

[Ctrl]+[Z]キーまたは[編集メニュー→元に戻す」で元に戻すことも可能

テクスチャペイントの操作方法

ブラシのプロパティの変更

 ブラシの大きさや、強さ、色などは[3Dビューポート]の上の[ツール設定バー]で変更可能です。また、右側にある[プロパティエディター]の[ツール]タブ(一番上のドライバーとスパナのアイコン)からもアクセスできます。こちらではもっと細かい設定が可能です。

 [プロパティエディター]の一番上にある[▼テクスチャスロット]のパネルは、意味がわからなければ触らないでください。

ペイント中に使うUIの一覧

 ペイント中、[3Dビューポート]で右クリックすると色やブラシの設定ができる小さなダイアログが開きます。また[F]キー押下で、すばやくブラシの大きさが変更できます。

ペイント中のショートカットキーなど

ツールバーについて

ペイント用ツールバー

 [3Dビューポート]左端には、ペイント用のツールがあり、左側の[画像エディター]と共通になっています(右図)。今回は一番上の[ドロー]ツールのみ使用します。

 これで、服の表面に直接絵を描けるようになりました。でも手書きで最初に挙げた画像のように服の模様を描くのはきついですよね。そこで、次回は模様を簡単に描く方法を解説します。完成まで、しばらくお待ちください。

VRMインポートの追記

 ここからは「自作.blendファイルを配布したい人用」への前回のフォローです。講座とは関係ないので、必要のない方は読み飛ばしてください。

 前回の最初に少し書きましたが、VRMモデルをインポートした.blendファイル内にパック(同梱)されたテクスチャファイルに、「ユーザーパス」が入っている場合があります。これはVRMファイルのインポート時、そのモデルに使用されているテクスチャデータが「一時ファイルのパス」に一時的に展開されるためです。

 もし「Blender」に一時ファイルのパスが設定されていない場合、「ユーザーフォルダ」の下に展開され、.blendファイルに再びパックされた時に、そのパスが一緒に保存されます。そのため、この.blendファイルを配布すると、他人にユーザー名が知られる可能性があります。

 実際に確認するには、「Shading」ワークスペースの「画像エディター」ヘッダーから、下図の赤の囲みをクリックしてテクスチャ画像を指定します。

白い囲みが画像ファイルの「ソースパス」

 もし含まれていた場合は、次の手順で別の「一時ファイルのパス」に変更可能です。

  1. [編集]メニュー→[プリファレンス]ダイアログ→[ファイルパス]タブ→[▼データ]領域→[一時ファイル]欄に、一時ファイルを保存するパスを指定します。

    こんな感じで指定します

  2. [ファイル]-[外部データ]-[ファイルにすべてパック解除]コマンド→[現在のディレクトリに(必要があれば作成して)保存します]を実行します。
  3. 使用している.blendファイルに同梱されているテクスチャファイルが、同じフォルダー内のテクスチャ用フォルダーに展開されます。

    こんな風に展開されます

  4. [ファイル]→[外部データ]→[すべて.blendにパック]を実行し、もういちどこの.blendファイルに同梱(パック)させます。
  5. [ファイル]→[保存]で保存します。