3DCGは難しくない!? 「Blender」で3Dモデリング初めの一歩
「Blender」のインストール・日本語化から「3teneFREE」で表示するまで丁寧に解説
2021年7月16日 09:02
現在、YouTuberがメディアの一つとしてすっかり定着し、その中でも「VTuber」と呼ばれる、架空のキャラクターを用いた形式の動画配信が人気を呼んでいます。最近ではパラメーターによるキャラクター制作ツールも登場し、VTuberデビューのハードルが低くなりました。
一方で、高機能かつ無料の3DCGモデリングソフト「Blender」への関心も高まってきており、今年1月には基本的な3Dモデルを制作するまでの内容をステップ・バイ・ステップで解説した無料の解説書が大きな話題になりました。
VTuberモデルを制作してみたい読者に向けて、キャラクター制作ツールで作った3Dモデルを基に、「Blender」でカスタマイズするノウハウを伝授します。なお、本稿はWindows環境で解説しますが、インストールなどを除けば他のLinuxやmacOS環境でも利用可能です。
▼基となる3Dモデルの用意
▼「Blender」のインストールと初期設定
・まずはインストーラーをダウンロード
・初回起動時のスプラッシュ画面で日本語化
・VRMファイルを扱うためにアドオンを導入
▼3Dモデルを読み込んでみよう
・デフォルトで表示されるブロックの削除
・VRM形式の3Dモデルをインポート
▼[Shading]ワークスペースと[3Dビューポート]操作
・[ナビゲートギズモ]領域のアイコンで視点を変更
▼髪の毛の色を変えてみよう
・髪の毛を選択する
・[シェーダー]エディターで色の設定を変更
▼衣服のモデルを編集してみよう
・衣服を選択して編集できる状態にする
・リンク選択で袖を選択・削除
▼VTuber用ツールで確認してみよう
基となる3Dモデルの用意
モデルは現在主流の形式である「VRM」フォーマットの物を使用します。これは多くのVTuber用アプリで採用されており、スタンダードと言えるでしょう。
本講座では、筆者が用意したモデルを使用します。こちらからダウンロードしてください(編集部注:ダウンロードできない場合は右クリックメニューから[名前を付けてリンク先を保存]コマンドを使ってダウンロードしてください)。
なお、このモデルは2021年夏に正式版リリースが控えている「VRoid Studio」を使用して作成されています。
「Blender」のインストールと初期設定
まずは「Blender」をインストールして使いやすいように日本語化し、VRM形式の3Dモデルを編集できるようにしましょう。
まずはインストーラーをダウンロード
「Blender」公式サイトのダウンロードページにアクセスすると、アクセスした端末(Windows/macOS/Linux)にあわせたバイナリが自動的に選択され、水色のボタンを押すと最新版がダウンロードされます。Windows版なら、窓の杜からダウンロードしてもかまいません。
ただし、将来的にバージョンが変わった時に、この本稿の内容がそのまま使用できるかはわかりません。その場合は代わりに左上の「Long-term Support」のリンクをクリックし、「Blender 2.93 LTS」をダウンロードしてください。
初回起動時のスプラッシュ画面で日本語化
ダウンロードが終わったらインストーラーを起動し、インストールします。基本的にGPL(GNU General Public License)の確認画面で[I Accept the terms in the License Agreement]チェックボックスをクリックしてONにする以外は「Next」ボタンをクリックでOKです。終わったら「Blender」を起動してください。
「Blender」の起動後、初回はスプラッシュ画面でUIの設定ができます。
[Languages]のプルダウンリストで[Automatic (Automatic)]または[Japanese (日本語)]に変更しましょう。これらは後述の[Blenderプリファレンス]ダイアログの[インターフェイス]タブでも設定できます。
VRMファイルをインポート・エクスポートするためにアドオンを導入
次に「Blender」がVRMファイルを読み書きできるようにします。
これにはsaturday06氏が作成された「VRM Add-on for Blender」アドオンを使用します。「Zip」と書かれたアイコンから「VRM_Addon_for_Blender-release.zip」をダウンロードします。なお、本講座では「1.10.0」を使用しました。
次に[編集]-[プリファレンス...]メニューで[Blenderプリファレンス]ダイアログを開き、[アドオン]タブに切り替えます。右上の「インストール」ボタンをクリックし、ダウンロードした「VRM_Addon_for_Blender-release.zip」を指定します。
インストールが成功すると、自動的にこのアドオンのパネルが表示されますので、チェックボックスをONにします。
終わったらウィンドウを閉じてください。デフォルトでは自動的に設定が保存されます。
3Dモデルを読み込んでみよう
解説が前後しましたが、「Blender」の画面は下図のような役割になっています。
デフォルトで表示されるブロックの削除
まず邪魔なデフォルトの「立方体」を削除してみましょう。
立方体がハイライトされ、選択状態にあることを確認します。そうでなければ左クリックで選択します。次に右クリックメニューから[削除]コマンドを実行すると、立方体が削除されます。[Delete]キーや[X]キーでも削除できます。
[Shading]ワークスペースと[3Dビューポート]操作
せっかく読み込んだモデルですが、現在の画面では表示が白黒で質感がわからないですよね。
そこで[Shading]ワークスペースの出番です。画面上部のタブを[Shading]に切り替えてください。初回は少し時間がかかりますが、モデルに色が付き、テクスチャも表示されるはずです。
このタブで切り替えられる画面のことを「Blender」では「ワークスペース」といい、作業内容に合わせて適切なエディターの種類とレイアウトが設定されています。
髪の毛の色を変えてみよう
画面下側にあるのは[シェーダー]エディターで、選択したオブジェクトに対応する「マテリアル」(質感の設定)が表示されます。ここで髪の色を変えてみましょう。
[シェーダー]エディターで色の設定を変更
画面下側の部分([シェーダー]エディター)には、線と箱が多数つながった「ノードツリー」が表示されています。ここではマウスホイールでスクロールやズームができます。
この中から「Mtoon_unversion...」というノードから、下図の番号の順番でたどっていき、最後の「DiffuseColor」ノード内で色を変更してみましょう。
次のようになれば成功です。
これは任意ですが、実は他にも髪の色のマテリアル設定が後述の「Body」オブジェクト内にあります。このオブジェクトでは複数のマテリアルがあり、[マテリアル]スロットで切り替える必要があります。
[シェーダー]エディターのヘッダー(上部のバー)の「Slot 1」と表示されている部分からアクセスできますので、後で挑戦してみてください。
衣服のモデルを編集してみよう
次は衣服を編集し、「ノースリーブ」に変更してみましょう。
衣服を選択して編集できる状態にする
まず、体のオブジェクトを選択します。
「Blender」にはオブジェクトを配置する[オブジェクト]モードと、その形状を編集する[編集]モードといった「モード」があり、[3Dビューポート]のヘッダー左側で確認できます。衣服を編集するには[編集]モードにする必要があるので、ここで切り替えるか、画面上部のタブで[Modeling]ワークスペースに切り替えます。
衣服のオブジェクトに頂点や辺によるワイヤーフレームが表示され、編集可能になります。
リンク選択で袖を選択・削除
では衣服を編集したいと思いますが、幸い、今回サンプルモデル作成に利用した「Vroid Studio」では、衣服と体のパーツが分かれているため、ここでは簡単に袖の部分だけを削除してしまいましょう。
まず、現在の選択をいったん解除します。どこか頂点から離れた空いている場所で左クリックしてください。
次に袖の上にマウスカーソルを置き、[L]キーを押すと、袖パーツだけが選択されます。
そして、右クリックメニューから[頂点を削除]コマンドを実行すると、選択部分が削除されます。
同様の操作でもう片方を削除すれば完成です。[Shading]ワークスペースで早速確認してみましょう。
ここで一度[ファイル]メニューの[保存]で「.blendファイル」として保存しておくといいでしょう。
VTuber用ツールで確認してみよう
今まで「Blender」内で編集してきましたが、実際にちゃんと動いてくれるのかどうかはわかりません。
そこで再びVRM形式にエクスポートし、VTuber用アプリで表示してみましょう。[ファイル]-[エクスポート]-[VRM (.vrm)]メニューを選択し、好きなファイル名を付けて[Export VRM]を押せばOKです。
ここでは確認に「3teneFREE」を使用します。他のVRM形式が表示できるアプリがあるならそれでもOKです。[アバターの選択]ボタンから先ほどエクスポートしたVRMファイルを選択して表示します。
プロファイルの画像(Thumbnail.png)を差し替える必要がありますが、他は特に問題ないように見えます。
「3teneFree」の全機能は試していないので、もしかしたら不具合があるかもしれません。また、実際の運用には上記の「VRM Add-on for Blender」アドオンの作者様のお勧めの通り、「UniVRM」(Unity用のアドオン)で正規化することをお勧めします。
お疲れ様でした! 本稿が皆さんの3Dライフの一助となることを祈ります。