3DCGは難しくない!? 「Blender」で3Dモデリング初めの一歩

「Blender」のインストール・日本語化から「3teneFREE」で表示するまで丁寧に解説

「Blender」で既存のVTuberモデルを改造して操作を覚えよう!

 現在、YouTuberがメディアの一つとしてすっかり定着し、その中でも「VTuber」と呼ばれる、架空のキャラクターを用いた形式の動画配信が人気を呼んでいます。最近ではパラメーターによるキャラクター制作ツールも登場し、VTuberデビューのハードルが低くなりました。

 一方で、高機能かつ無料の3DCGモデリングソフト「Blender」への関心も高まってきており、今年1月には基本的な3Dモデルを制作するまでの内容をステップ・バイ・ステップで解説した無料の解説書が大きな話題になりました。

 VTuberモデルを制作してみたい読者に向けて、キャラクター制作ツールで作った3Dモデルを基に、「Blender」でカスタマイズするノウハウを伝授します。なお、本稿はWindows環境で解説しますが、インストールなどを除けば他のLinuxやmacOS環境でも利用可能です。


基となる3Dモデルの用意

 モデルは現在主流の形式である「VRM」フォーマットの物を使用します。これは多くのVTuber用アプリで採用されており、スタンダードと言えるでしょう。
 本講座では、筆者が用意したモデルを使用します。こちらからダウンロードしてください(編集部注:ダウンロードできない場合は右クリックメニューから[名前を付けてリンク先を保存]コマンドを使ってダウンロードしてください)。

 なお、このモデルは2021年夏に正式版リリースが控えている「VRoid Studio」を使用して作成されています。


「Blender」のインストールと初期設定

 まずは「Blender」をインストールして使いやすいように日本語化し、VRM形式の3Dモデルを編集できるようにしましょう。


まずはインストーラーをダウンロード

 「Blender」公式サイトのダウンロードページにアクセスすると、アクセスした端末(Windows/macOS/Linux)にあわせたバイナリが自動的に選択され、水色のボタンを押すと最新版がダウンロードされます。Windows版なら、窓の杜からダウンロードしてもかまいません。

 ただし、将来的にバージョンが変わった時に、この本稿の内容がそのまま使用できるかはわかりません。その場合は代わりに左上の「Long-term Support」のリンクをクリックし、「Blender 2.93 LTS」をダウンロードしてください。

Blender Foundationのダウンロードページ


初回起動時のスプラッシュ画面で日本語化

 ダウンロードが終わったらインストーラーを起動し、インストールします。基本的にGPL(GNU General Public License)の確認画面で[I Accept the terms in the License Agreement]チェックボックスをクリックしてONにする以外は「Next」ボタンをクリックでOKです。終わったら「Blender」を起動してください。

インストーラーのGPLの確認ステップ

 「Blender」の起動後、初回はスプラッシュ画面でUIの設定ができます。

 [Languages]のプルダウンリストで[Automatic (Automatic)]または[Japanese (日本語)]に変更しましょう。これらは後述の[Blenderプリファレンス]ダイアログの[インターフェイス]タブでも設定できます。

Blenderの最初の起動画面とスプラッシュ


VRMファイルをインポート・エクスポートするためにアドオンを導入

 次に「Blender」がVRMファイルを読み書きできるようにします。

 これにはsaturday06氏が作成された「VRM Add-on for Blender」アドオンを使用します。「Zip」と書かれたアイコンから「VRM_Addon_for_Blender-release.zip」をダウンロードします。なお、本講座では「1.10.0」を使用しました。

アドオン配布ページ

 次に[編集]-[プリファレンス...]メニューで[Blenderプリファレンス]ダイアログを開き、[アドオン]タブに切り替えます。右上の「インストール」ボタンをクリックし、ダウンロードした「VRM_Addon_for_Blender-release.zip」を指定します。

[Blenderプリファレンス]ダイアログの[アドオン]タブ

 インストールが成功すると、自動的にこのアドオンのパネルが表示されますので、チェックボックスをONにします。

アドオンのアクティブ化

 終わったらウィンドウを閉じてください。デフォルトでは自動的に設定が保存されます。


3Dモデルを読み込んでみよう

 解説が前後しましたが、「Blender」の画面は下図のような役割になっています。

Blenderの初期スクリーンレイアウト


デフォルトで表示されるブロックの削除

 まず邪魔なデフォルトの「立方体」を削除してみましょう。

 立方体がハイライトされ、選択状態にあることを確認します。そうでなければ左クリックで選択します。次に右クリックメニューから[削除]コマンドを実行すると、立方体が削除されます。[Delete]キーや[X]キーでも削除できます。

立方体の削除


VRM形式の3Dモデルをインポート

 次にいよいよ3Dモデルの読み込みです。

 [ファイル]-[インポート]-[VRM (.vrm)]メニューを選択し、ダウンロードしたモデルを指定します。成功すれば画面の真ん中にモデルが現れます。少し小さめなので、ホイール回転または[3Dビューポート]右上の[ナビゲートギズモ]領域にある虫眼鏡型アイコンをドラッグしてみてください。

VRMモデルインポート後


[Shading]ワークスペースと[3Dビューポート]操作

 せっかく読み込んだモデルですが、現在の画面では表示が白黒で質感がわからないですよね。

 そこで[Shading]ワークスペースの出番です。画面上部のタブを[Shading]に切り替えてください。初回は少し時間がかかりますが、モデルに色が付き、テクスチャも表示されるはずです。

Shadingワークスペースへの切り替えタブ

 このタブで切り替えられる画面のことを「Blender」では「ワークスペース」といい、作業内容に合わせて適切なエディターの種類とレイアウトが設定されています。


[ナビゲートギズモ]領域のアイコンで[3Dビューポート]の視点を変更

 せっかくなので、ここで少し画面を回転させてモデルを眺めてみましょう。[ナビゲートギズモ]領域のアイコンを色々触ってみてください。また、マウスホイールの回転やホイールドラッグ、[Shift]+ホイールドラッグでも画面を操作できます。

[Shading]ワークスペースでの[3Dビューポート]と[ナビゲートギズモ]領域


髪の毛の色を変えてみよう

 画面下側にあるのは[シェーダー]エディターで、選択したオブジェクトに対応する「マテリアル」(質感の設定)が表示されます。ここで髪の色を変えてみましょう。


髪の毛を選択する

 画面上側の[3Dビューポート]で「オブジェクト」をクリックすると、輪郭が光りますので、「髪の毛」のオブジェクトを選択してみてください。下図のようになれば成功です。

「髪の毛」オブジェクトを選択(左側の2つの領域(エディター)はここでは使いません)


[シェーダー]エディターで色の設定を変更

 画面下側の部分([シェーダー]エディター)には、線と箱が多数つながった「ノードツリー」が表示されています。ここではマウスホイールでスクロールやズームができます。

 この中から「Mtoon_unversion...」というノードから、下図の番号の順番でたどっていき、最後の「DiffuseColor」ノード内で色を変更してみましょう。

途中、赤いノードの三角をクリックして展開する必要があります

 次のようになれば成功です。

変更後のモデル

 これは任意ですが、実は他にも髪の色のマテリアル設定が後述の「Body」オブジェクト内にあります。このオブジェクトでは複数のマテリアルがあり、[マテリアル]スロットで切り替える必要があります。

 [シェーダー]エディターのヘッダー(上部のバー)の「Slot 1」と表示されている部分からアクセスできますので、後で挑戦してみてください。

ヘッダーのマテリアルスロット切り替え


衣服のモデルを編集してみよう

 次は衣服を編集し、「ノースリーブ」に変更してみましょう。


衣服を選択して編集できる状態にする

まず、体のオブジェクトを選択します。

「Body」オブジェクト選択

 「Blender」にはオブジェクトを配置する[オブジェクト]モードと、その形状を編集する[編集]モードといった「モード」があり、[3Dビューポート]のヘッダー左側で確認できます。衣服を編集するには[編集]モードにする必要があるので、ここで切り替えるか、画面上部のタブで[Modeling]ワークスペースに切り替えます。

モード表示と各ワークスペース(タブ)

 衣服のオブジェクトに頂点や辺によるワイヤーフレームが表示され、編集可能になります。

Modelingワークスペースでの表示


リンク選択で袖を選択・削除

 では衣服を編集したいと思いますが、幸い、今回サンプルモデル作成に利用した「Vroid Studio」では、衣服と体のパーツが分かれているため、ここでは簡単に袖の部分だけを削除してしまいましょう。

 まず、現在の選択をいったん解除します。どこか頂点から離れた空いている場所で左クリックしてください。

少し離れた場所をクリックで選択解除

 次に袖の上にマウスカーソルを置き、[L]キーを押すと、袖パーツだけが選択されます。

リンク選択

 そして、右クリックメニューから[頂点を削除]コマンドを実行すると、選択部分が削除されます。

右クリックメニューから頂点を削除

 同様の操作でもう片方を削除すれば完成です。[Shading]ワークスペースで早速確認してみましょう。

衣服をノースリーブに

 ここで一度[ファイル]メニューの[保存]で「.blendファイル」として保存しておくといいでしょう。

VTuber用ツールで確認してみよう

 今まで「Blender」内で編集してきましたが、実際にちゃんと動いてくれるのかどうかはわかりません。

 そこで再びVRM形式にエクスポートし、VTuber用アプリで表示してみましょう。[ファイル]-[エクスポート]-[VRM (.vrm)]メニューを選択し、好きなファイル名を付けて[Export VRM]を押せばOKです。

 ここでは確認に「3teneFREE」を使用します。他のVRM形式が表示できるアプリがあるならそれでもOKです。[アバターの選択]ボタンから先ほどエクスポートしたVRMファイルを選択して表示します。

「3tene Free」による表示。

 プロファイルの画像(Thumbnail.png)を差し替える必要がありますが、他は特に問題ないように見えます。

 「3teneFree」の全機能は試していないので、もしかしたら不具合があるかもしれません。また、実際の運用には上記の「VRM Add-on for Blender」アドオンの作者様のお勧めの通り、「UniVRM」(Unity用のアドオン)で正規化することをお勧めします。

 お疲れ様でした! 本稿が皆さんの3Dライフの一助となることを祈ります。