HDR出力が可能になった無料の3DCG統合環境「Blender 5.0」

ボリューム系ノードの追加

　ジオメトリノードに、ボリュームを操作するノードが多数追加されています。

　その中の「SDF～」（Signed Distance Field）の付いたノードは、ボリュームをメタボールのように扱う物です。最初の画像の雪などの表現や、下記の動画のような変わった表現も行えます。

　他にもいくつか動画がBlender Artistsスレッドの3dioot氏の投稿にあります。

リピートノードの移植

　ジオメトリノードの［リピート］ノードがシェーダーノードに移植されました。例えば、パターンを回転して重ね合わせるクロスハッチング（線を交差させたパターン）の作成が楽になります。

クロスハッチングパターンのテクスチャ（クリックでノード表示）

　また、前回ご紹介したバンドルとクロージャノードも実装されています。

テーマ構造の変更

　テーマの構造が整理され、300以上の項目の統廃合により、テーマの作成が以前より楽になりました。

　その一方で互換性がなくなったため、一部のテーマは利用できなくなるかもしれません。その場合は作者の手による更新を待つか、「Theme Updater」アドオンまたは手動で更新（英文）してみてください。

　テーマが更新可能かどうかは、プリファレンス（［編集］－［プリファレンス...］メニュー）にある［エクステンションを入手］の［テーマ］カテゴリから確認できます。

テーマの更新の有無は、［編集］メニューの［プリファレンス...］－［エクステンションを入手］（①）の［テーマ］カテゴリ（②）から確認できる

ツール使用中の情報表示が中央に

　［移動］や［押し出し］などのマウス移動を伴うツールの移動量やモードなどの情報がヘッダー左側ではなく、中央に表示されるようになりました。

マウス移動中のツールのパラメーターが中央に表示されるように

ノードソケット形状とグループノードの変更

　ノードソケットの形状が一新され、『●』は様々な種類の値、『■』が単一値、『◆』がフィールド（インデックスなどの変化する値）、『田』がグリッドまたはリストになります。色はデータタイプを表します。

　また、グループノードもノードが重なったような形になり、わかりやすくなりました。

表示が新しくなったノードソケットとグループノード（左下）

ノードタイプの交換

　［ノード］－［交換］（［Shift］＋［S］キー）メニューで、現在選択中のノードを別のノードタイプに変更できるようになりました。

　この機能は元々「Node Wrangler」アドオンの機能の一つでしたが、v4.5でメニュー構造の変更により一度削除され、v5.0でネイティブの機能として復活しました。

「ワーキング色空間」の導入

　「Blender」本体の作業用の色空間「ワーキング空間」が導入されました。読み込んだ画像や動画はいったんこの空間に変換され、作業後、レンダリング時に指定の色空間に変換・出力されます。

HDR・広色域表示と出力に対応

　HDR・広色域表示と出力に対応しました。表示にはHDR対応ディスプレイとOS側のHDR設定を準備し、WindowsとLinuxでは「Blender」のバックエンドを「Vulkan」に設定する必要があります。

新しい［カラーマネージメント］パネル（レンダープロパティ内）

カラーピッカーの新しいモード

　カラーピッカーには新しく［リニア］と［知覚］モードが追加されました。これは内部表現のリニアカラーと、知覚的なカラーのいずれかで色を設定できます。

カラーピッカーの［リニア］と［知覚］モード

［ノードを使用］チェックボックスとコンポジットノードの廃止

　画像や動画にエフェクトを与えるコンポジターの［ノードを使用］チェックボックスが廃止され、他のノードエディター同様、［＋新規］ボタンでノードツリーを新規追加するようになりました。

　さらに、合成処理結果の出力先の［コンポジット］ノードが［グループ出力］になりました。入力も［グループ入力］で置き換えることができるため、グループノードを作成できます。

アセットシェルフの表示

　下側にアセットシェルフが表示されるようになり、一部のエフェクトがアセットとして「エッセンシャルアセット」に含まれるようになりました。

新しくなったコンポジターの作業画面

　他にもグレアノードなど、多数のノードに改善や変更があります。

シーケンサーシーン

　シーケンサーもコンポジター同様、［＋新規］ボタンで専用の「シーケンサーシーン」を追加して使うようになりました。

　［ファイル］メニューの［新規］－［ビデオ編集］テンプレートからシーケンサーを利用する場合は、デフォルトで「Edit」シーンが追加されています。

シーケンサー用レンダリングオペレーター

　「Blender」のアクティブシーン（最上部右のセレクター）がシーケンサーのシーンと違う場合、［レンダー］メニューにシーケンサー用のオペレーターが出てきます。

［レンダー］メニューのシーケンサー用のレンダリングオペレーター（①）と、シーケンサーシーンのレンダリング切り替えボタン（②）

　また、画像エディターで「Render Result」にしている場合、「シーケンサーアイコン」をクリックすることで、アクティブシーンとシーケンサーシーンのレンダリング結果を切り替えできます。

ストリップのプロパティ表示が上に移動

　選択中のストリップのプロパティの表示が、タイムライン右側のサイドバーから、プレビュー右側のプロパティエディターの新しいタブ、「ストリップ」と「ストリップモディファイアー」に表示されるようになりました。

ストリップのプロパティは、プレビュー右側のプロパティエディター内の［ストリップ］と［ストリップモディファイアー］タブに表示されるように

コンポジターシーケンサーストリップモディファイアー

　なんだかやたらに長い見出しですが、シーケンサーの「ストリップ」に付加できるモディファイアーに、コンポジターのツリーが利用可能な［コンポジター］モディファイアーが追加されました。

　対象のストリップ選択後、［ストリップモディファイアー］プロパティで［モディファイアーを追加］－［コンポジター］モディファイアーを追加後、モディファイアーパネル内で［新規を追加］をクリックすれば追加できます。

　追加したノードツリーを編集するには、ビデオ編集ワークスペース内のどこかのエディターをコンポジターに変更し、左上のセレクターを［シーケンサー］モードに切り替えます。他のワークスペースで同様に設定してもうまくいかないようです。

ストリップ選択後、［ストリップモディファイアー］プロパティ（①）で［モディファイアーを追加］－［コンポジター］モディファイアーを追加（②）後、モディファイアーパネル内で［新規を追加］（③）をクリックすれば追加される

編集するには、他のエディターを［コンポジター］に切り替え、［シーケンサー］モードに変更（④）