いまさら聞けないExcelの使い方講座

【Excel】引き継ぐブックの数式ってどうなっているんだっけ……?エクセルの「ワークシート分析」でチェックするワザ

引継ぎ直前に「どのセルにどんな数式が入っているんだっけ…?」

 普段からExcelを使っていろいろな業務を行っていると、頻繁に使うブックだけでなくめったに使わないブックもあると思います。よく使うブックは、使い方やセルに入力されている内容などを細かく把握できているかもしれませんが、あまり使わないブックだと、どのセルにどのような数式が入力されているかなどをパッと思い出せないこともよくあるのではないでしょうか。いざ業務を引き継ぐ時になって、後任者との打合せ中に「このブックのどこにどんな数式が入力されているんだっけ……?」と冷や汗をかくのは避けたいですよね。

 Excelには、シート上に入力されている数式を確認したり、エラーの原因の判定に役立てることができる「ワークシート分析」という機能があります。今回は、「ワークシート分析」の中でも特に役立つ3つの機能(数式の表示、参照元のトレース、エラーチェック)の使い方を解説します。

❶シート上に入力されている数式を表示できる[数式の表示]

 Excelで作成された請求書のブック(①)をほかの人に引き継ぐことになったとします。請求書や見積書のように金額を記載する欄のあるブックには、税込金額や合計金額を求めるために数式が入力されている場合が多いものです。でも、どのセルにどんな数式が入力されているかを逐一覚えている人は少ないでしょう。

 「シート上のどこにどんな数式が入力されているか」を知りたい場合は、Excelの[数式の表示]機能が便利です。数式の場所や内容を知りたいシートを開いて、[数式]タブ(②)→[数式の表示](③)をクリックします。

 すると、シート上で数式が入力されているセルの幅が一時的に広がり、入力されている数式が表示されます(④)。これなら、どこにどんな数式が入力されているか、一目瞭然ですね。数式が入力されていないセルも同時に幅が変わることがありますが、シートに入力されている内容に影響はありません。

 急にセルの幅が広がって数式が表示されるので驚くかもしれませんが、先ほどクリックした[数式の表示]をもう一度クリックすればもとの表示に戻る(⑤)ので、安心してくださいね。

❷数式が参照しているセルをわかりやすく表示できる[参照元のトレース]

 数式が入力されていることはわかっても、数式をパッと見ただけではどのセルを参照しているのかが把握しにくいものです。このような時には、[参照元のトレース]機能を使うと、どのセルを参照しているかが一目瞭然になります。先ほどの請求書の例で、この機能を使ってみましょう。

 このシートのセルB9には、今「¥1,925」(①)と表示されています。このセルには数式が入力されているのですが、どのセルを参照した数式なのかを確認してみましょう。

 セルの参照元を確認したいセル(ここではセルB9)をクリックしてアクティブにした状態で、[数式]タブ(②)→[参照元のトレース](③)をクリックします。

 すると、選択しているセルB9に向かって、セルE19から青い矢印(④)が表示されます。セルB9には「=E19」という数式が入力されていて、セルE19を参照して同じ内容が表示されるようになっています。この矢印によって、参照関係が視覚的にわかりやすくなりましたよね。

 さらに[参照元のトレース]をクリックすると、参照元のセルが参照しているセルが矢印でつながれていき、参照元を順にたどっていくことができます(⑤)。この例の場合は、参照先をずっとたどっていくと、「数量」と「単価」から「金額」が求められ、その「小計」と「消費税」額から「合計」が求められているという構造が見えてきます。

 参照先のセルが確認できたら、[数式]タブ→[トレース矢印の削除](⑥)をクリックすると、シート上に表示されているすべての矢印が削除されます。もちろん、この矢印を表示することによってシートに入力されている内容に影響はありません。

 ブックを引き継ぐ前に、どんな数式が入力されていてどのような参照関係になっているかをおさらいしておきたい時などに役立つ機能です。

❸エラーの原因の特定に役立つ[エラーチェック]

 先ほどの請求書のフォーマットを引き継ぐ前に細かな修正を行っていたところ、急にセルB9にエラー(①)が表示されてしまったとします。エラーとして表示されている「#NAME!」という内容から、どうやら数式の関数名が誤っているらしいということはわかりますが、このセルには関数が入力されていないため、どのように修正したらよいかパッと思いつきません。

 チェックしたいエラーが表示されているセル(ここではセルB9)をクリックしてアクティブにし、[数式]タブ(②)→[エラーチェック](③)をクリックします。

 すると、[エラーチェック]ダイアログボックスが表示されます。このダイアログボックスにエラーの内容が表示されます。ここでは、セルB9の数式に認識できないテキストが入力されていると表示されています(④)が、セルB9に入力されている数式は「=E19」というものなので、ここに入力されている内容が直接のエラー原因ではなさそうです。では、どこにエラーの原因があるかをたどってみましょう。このような時は、[エラーチェック]ダイアログボックスの[エラーのトレース](⑤)をクリックします。

 すると、セルB9に向かってセルE19から赤い矢印(⑥)が引かれました(同時に、そのセルが参照しているセルへの青い矢印も表示されます)。矢印の始点にあるセルE19にも、セルB9と同じ「#NAME!」エラーが表示されています。このエラーがセルB9のエラーの原因のようですね。

 エラーが表示されているセルE19(⑦)をクリックして数式の内容を見ると、「SUM」と入力するべき部分が「SAM」となっている誤った数式(⑧)が入力されています。この関数名の誤りによって「#NAME!」エラーが表示されていたというわけです。

 セルE19に入力されている数式を修正(⑨)し、[Enter]キーを押して数式を確定すると、矢印が赤から青に変わりました。エラーが表示されなくなったので、確認のためもう一度エラーチェックをしてみましょう。[エラーチェック]ダイアログボックスの[再開](⑩)をクリックします。

 先ほどは表示されなかった「シート全体のエラーチェックを完了しました。」というメッセージが表示されました。これはシート上にエラーがない場合に表示されるメッセージなので、シート上のすべてのエラーがなくなったということがわかります。[OK](⑪)をクリックすると、このメッセージと[エラーチェック]ダイアログボックスを同時に閉じることができます。

 エラーの原因がパッとわからない場合は、エラーチェックやエラーのトレースを行ってみると修正に役立てることができます。

困った時に頼れる「ワークシート分析」機能を業務で活用しよう

 今回は、Excelの「ワークシート分析」機能の中で業務の引き継ぎ時などに特に役立つ3つの機能の使い方を解説しました。今回の記事では、相手に引き継ぐ前にブックの内容を復習するというシチュエーションで解説しましたが、自分が他の人からブックを引き継いだ時にそのブック内の数式などを確認したい時にも役立てられる機能です。

 引継ぎだけでなく、普段の業務の中でもいろいろな場面で役立つ「ワークシート分析」機能をぜひ活用してみてくださいね。

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