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「Discord」は本当にTwitterからの避難場所になりうるのか ~そもそもどんなアプリ?

“ゲーム専用チャット”なの? 利用のメリット・デメリットをおさらい

「Discord」ってどんなアプリ? ゲーマー専用?

 去る2月3日、Twitterユーザーに激震が走った。複数のユーザーのアカウントが突然凍結され、さまざまな場所で「凍結まつり」「春のBANまつり」という言葉が飛び交った。この凍結まつりは「Twitterに連動しているアプリからの定期ツイートをしている」、いわゆるbotによる定期投稿を行っているのが原因ではないかと言われている。

 筆者は基本的に、Twitterを含めたSNSはROM専なので「凍結まつり」については割と他人事で、その動向を眺めているに過ぎなかった。ただ筆者の知人も数人アカウントを凍結されてしまった。知人たちはかなりのTwitterヘビーユーザーやツイ廃といってもいい人もいてその狼狽ぶりはなかなかのものだった。凍結された知人たちは「異議申し立て」を行い、早い人で即日、時間がかかった人では1カ月半ほどかかって凍結を解除された。

 その後もTwitterでは、規模こそ小さくなったがときどき「凍結まつり」は行われており、Twitterユーザーの中にはTwitterからの避難場所を探す動きもある。「凍結まつり」が行われるたびにその動きは活発になっている傾向にあり、そんな避難場所としてよく挙げられるのが「Instagram」や「マストドン」、「Discord」などのアプリだ。

 その中でもDiscordは、ビデオ通話が参加人数上限10人、時間無制限でできるということで、コロナ禍においてオンライン会議などで使われることも多くなり、実際に使ったことがある方やその名を耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。

 そんなDiscordだが、ゲームプレイヤーからの圧倒的な支持を得ている「ゲーム専用チャット」というイメージも強い。そこでゲームライターである筆者の視点から、改めてどのような機能が備わっているのかを確認し、もしもの時にTwitterからの避難場所となりうるのかを考えていきたい。

そもそも「Discord」とは何か

 「Discord」は、2015年にリリースされたチャットプラットフォーム。「サーバー」と呼ばれる、それぞれのグループに参加することで他者と交流することができる。その機能はグループチャット、個人チャット、通話、画面共有などが可能だ。

筆者が参加しているゲームサーバー。友人たちに許可を取って掲載させてもらった

 サーバーの中に複数のチャンネルを作ることができ、目的や用途に合わせて会話を切り替えることができる。このチャンネルにはテキストチャットだけでなく、ボイスチャンネルも作成可能。ボイスチャンネルは最大99人まで参加できるため、大人数でのイベントや、昨今ではゲーム実況グループなども使っている。

 サーバーは100個までならいくつでも参加することができ、サーバーごとに表示する名前を変えることもできる。そのため、Twitterでの知り合いのサーバーやプライベートでの友人とのサーバーなど、ユーザーのサーバーに対する立ち位置に合わせて利用することができる。

参加サーバーごとに名前を変えることもできる

 サーバーには公開サーバーと非公開サーバーがあり、公開サーバーは誰でも入ることができるが、非公開サーバーは招待されないと入ることすら叶わない。

 またサーバーそれぞれには管理者がおり、その管理者が基本的にチャンネルを作るが、管理者から権限を他の参加者に付与されることで、サーバー内で参加者もチャンネルを作ることができるようになる。もちろんサーバーを荒らすようなことがあれば、サーバー管理者から出禁をくらってしまうこともある。

 サーバーごとに参加しているメンバーが一覧で並んでおり、誰がオンラインで、誰がオフライン、ということも一目瞭然でわかる。もちろんユーザー側で即座に変えることができるので、その時の状況に応じてささっと切り替えられる。

オンライン・オフラインはすぐに変更可能だ

 利用登録は非常にシンプルで、PCやスマホにアプリをダウンロードしてメールアドレスもしくは電話番号を入力後、「ユーザー名」、「パスワード」、「生年月日」を登録すれば完了だ。スマートフォンの認証アプリと携帯電話のSMS認証の2つを利用する2段階認証を設定しておけば、もしもの時も安心なので登録の際は2段階認証を忘れずにして欲しい。

 ちなみに筆者はDiscordにおいて、知り合いの中でセキュリティ上怖い話などは聞いたことがない。ただ、調べると乗っ取られている人もかなりいるようでサーバーを荒らされてしまったという事案もあるようだ、登録する際はアカウント管理と2段階認証をしておくことを強くおすすめしたい。

少しめんどくさいがセキュリティのためにも2段階認証をおすすめしたい

「Discord」はゲームを快適にプレイするために作られた

 そもそもDiscordは、開発者が「ファイナルファンタジーXIV」や「League of Legends」などのオンラインゲームにおいて、既存のVoIPツールではプレイヤー仲間たちとのコミュニケーションが難しいことに気がつき、そこに着想を得て開発された経緯を持つ「ゲーム専用チャット」ツールだ。

 そのため、会話に関してはゲームをプレイしながら通話していても遅延はない。ゲーム進行に会話が沿っているので即時の意思疎通が取りやすく、PvP系のゲームでも作戦変更などがスムーズに行えるなど、意思疎通に関するストレスを感じにくいものになっている。またゲーム画面の共有や、通話しながらチャットや画像共有もできるため、個人ごとの基本情報を持ちながら会話でゲームを楽しむTRPG(トークロールプレイイングゲーム)を楽しむことができる。

 ほかにもプラットフォームが違っていても同じゲームを楽しむ際にも使うことができるし、通話が必要ないゲームでも仲間内でわいわい楽しむこともできる。仲間の誰かがプレイしているゲーム画面を共有していたら、それを見て楽しむことも可能だ。

 Discordはゲーム専門チャットということで、PCで起動しているゲームを名前の下に表示することができる。これによって、いまオンラインの友人がどんなゲームをしているのかを目視でわかるため、気軽に誘ったり、感触を聞いたりと話題にもなる。このゲーム表示はOFFにすることもでき、仕事で使うときなどTPOに合わせて切り替えることができる。

 そんなDiscordもコロナ禍で一気にオンライン会議などの需要が広まり、アプリの軽さも相まって一気にゲームをしない人たちにも広まったと感じている。Discordのブランディングも「ゲーム専用グループチャット」から「コミュニティと友人のためのチャット」へと変更している。

実際に使っていると思う「Discord」のメリット・デメリット

 ここまでつらつらとDiscordの成り立ちやゲームプレイヤーとしての視点で書いてきたが、実際に使っていて感じたメリット・デメリットについて言及していきたい。

 メリットは正直いくつもあるが、まずはサーバー内に複数のチャンネルを立てることができるというところだ。目的・テーマごとにチャンネルが立てられているので、興味があるところに入ることができる。

 2つ目は何よりそのアプリの軽さだ。どんなゲームでもプレイしながら通話可能なので、気兼ねなく会話しながらゲームを楽しむことができる。ちなみに、PCゲームだけでなくさまざまなゲームに使っているが、昨今増えてきたクロスプラットフォームのゲームでも利用することが多く、自分の好きなコンソールで仲間と楽しくゲームができるのは嬉しい。

 3つ目は既読・未読などのストレスがないことだ。チャンネルの書き込みに対して既読・未読というものがつかないので、LINEのように見た・見てないということも気にしなくていい。またサーバー、チャンネルごとに新規書き込みの通知の有無も自由に設定できる。サーバー内であっても興味がないものは通知OFFにしてしまえば気にならない。

 4つ目はコミュニティの形成だ。Discordでは名前の下に現在プレイしているゲーム名が表示されたり、ゲーム画面を共有することができる。これらを見ながら情報交換をしたり、教えて欲しいことなども書き込んでおけば、誰かが反応してくれる。もちろん反応してくれなくても気にはしない。むしろ教えてくれたらラッキーぐらいの感じで聞けるので聞く方も気が楽だ。

 デメリットとしては、登録しただけでは誰とも交流できないという点が1番目に挙げられる。仲間内で作ってそのサーバーに入ればそれで問題ないが、正直ぼっちで作っても、入るサーバーがなければ交流は難しい。公開サーバーに入るという手もあるが、かなり雑多であることが多く荒れることもある。

 2点目は基本的にクローズドであるということだ。TwitterのようにAIでおすすめツイートやプロモーションが流れてくることもない。仲間内でこんな情報見つけたという書き込みがある感じになる。またその情報元がTwitterであることも多い。

 3点目はチャンネルの乱立だ。特に仲間内のサーバーに起こりやすいのだが、みんながチャンネルの作成権限を持っているため、たくさんのチャンネルが立ち上がることになる。気がついたらよくわからないチャンネルがいっぱいということもあるし、増えすぎてどれを見ていたのかわからなくなることもある。

筆者が参加しているゲームサーバーにもゲームごとにチャンネルがたくさん立っている

 あと、これはメリット・デメリットどちらともとれるが、さまざまなbotを入れることができる。botには多様な種類があり、サーバー管理に使えるものや音楽を流すもの、書き込みを読み上げるものなどがある。筆者が参加しているゲーム仲間のサーバーにもかなりの数のbotが入っているが、なかにはTRPG用のサイコロを振るbotなども入っており、ゲームを楽しむためのbotも入れることが可能となっている。

「Discord」は本当にTwitterからの避難場所になりうるのか

 よくTwitterからの非難場所として「Discord」は挙げられるが、正直なところ、筆者はジャンルが違うように感じる。どちらかと言うと非公開サーバーは、LINEのグループのようなものがたくさんある場所に近い気がする。公開サーバーは5ちゃんねるの一部を切り取ってきて、そこに通話と画面共有ができる機能がついているという感じだろうか。

 雑多にいろいろな情報を得ることができる分、その瞬間でないと見逃しがちになるTwitterとは用途の目的が違う気がする。どちらもコミュニケーションツールではあるが、Twitterは鍵垢でもない限り、基本的にオープンなもので、Discordはクローズドのものだ。Twitterはタイムラインを見逃してしまうとそのまま追えなくなってしまうこともあるが、Discordはどこから読んでいないのかすぐにわかるのでそのチャンネルの流れはさらっと追いかけることができる。

 もちろん用途は違うが、コミュニケーションツールであることに変わりはない。筆者の知人もTwitter凍結前にSNSで仲のよかった人たちとDiscordのサーバーを立ち上げていたようで、そこまでコミュニケーションに困ってしまうことはなかったようだ。もしもの時のために繋がっておきたい人とサーバーを立ち上げておくこと自体は無駄ではないと思う。