どれ使う?プログラミング教育ツール

教育用マイクロコンピューター「micro:bit」を実際に動かしてみよう

パソコンから切り離して工作に組みこんだり身につけたりもできる

 2020年度からついに小学校でプログラミング教育が実施されます。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。

 「micro:bit」は、教育用マイクロコンピューターで、プログラミング学習にはぴったりの安価で手軽なハード教材です。前回は「micro:bit」の紹介とプログラミング用のアプリでシミュレーターを動かすところまでを解説しました。今回は実際に「micro:bit」を動作させるところをやってみましょう。

 最初に前回作成したプログラムを確認しておきましょう。Aボタンを押すとハートのアイコンが表示され、Bボタンを押すと消えるというプログラムを作成しました。プログラム画面の開き方やプログラム作成方法は前回記事を参照してください。

AボタンとBボタンの動作をプログラムしてある。アプリで作成したプログラムはシミュレーターで試せる

「micro:bit」にプログラムを転送して機能を試す

 プログラムの作成とシミュレーションまではアプリだけでできてしまいますが、実際に「micro:bit」をつないでみましょう。パソコンと「micro:bit」をUSBケーブルで接続します。「micro:bit」は外部デバイスとしてパソコンに認識されます。

 USBケーブル(USB Type-AとMicro USB Type-B)さえあれば接続できて、ドライバー等のインストールも不要なのでとても手軽です。手持ちのケーブルがない場合は「micro:bit」と一緒に購入しておきましょう。

「micro:bit」とパソコンをUSBケーブルでつないだところ。この場合、Windowsのエクスプローラーで表示したときに、Dドライブとして「micro:bit」が認識されていることがわかる

 作成したプログラムはプログラム画面下部のフィールドで名前をつけて左下の[ダウンロード]ボタンをクリックすると、パソコン内に“microbit-[つけた名前].hex”のファイル名でダウンロードされます。Windowsのエクスプローラーで、ファイルを表示して、機器として認識されている「micro:bit」にドラッグします。USBメモリにファイルをコピーするのと同じ要領です。これで、「micro:bit」側へのプログラム転送が完了します。

プログラムに名前をつけて[ダウンロード]ボタンでダウンロードできる
ダウンロードの説明が表示されたところ

試しに「micro:bit」本体のAボタンを押してみると、アイコンが表示され、Bボタンでアイコンが消えるのが確認できます。

USBケーブルをつないだまま動作確認をしたところ。「micro:bit」本体でハートマークが表示されている

 ただし、これではパソコンにつながったままです。USBケーブルから「micro:bit」を外して、単体でも使ってみましょう。USBケーブルがつながっていればパソコンから給電されるのですが、パソコンから外した場合は、電池が必要です。単4電池2つの分の電池ボックスで動きます。コンパクトに納めたい場合は、用途に応じて、腕にはめるためのバングルモジュールや、電池モジュールなどを購入してもよいでしょう。これらは「micro:bit」本体と重ねてネジ止めできます。

電池モジュールにつないだところ。わかりやすいようにねじ止めはしていない。パソコンと切り離して「micro:bit」単体でも、Aボタンを押すとハートマークが表示される

 作ったプログラムが、パソコンと切り離しでも機能するというのは、どんなにシンプルなプログラムであっても、ちょっとすごい感じがするものです。画面内で作品を動かすのとは違い、手に取れるわかりやすさがあります。プログラムというのは、こうして独立した機器を動かすのに使われているんだという体感ができます。

JavaScriptと表示切り替え可能

 「micro:bit」のプログラミングアプリ「MakeCodeエディター」は、Microsoftが提供しているプログラミング学習プラットフォームである「MakeCode」で作られています。MakeCodeはオープンソースのプラットフォームなので、「micro:bit」の他にも、さまざまな機器系プログラミングツール用のアプリが「MakeCode」で作られています。

 「MakeCode」のプログラミング用ブロックはJavaScriptと対応するようにできているので、リアルタイムにJavaScriptと表示を切り替えられるのも特徴です。子どもの年齢が上がって興味をもったら、JavaScriptのコードに切り替えてコードを一部書き換えるなどして探索しても面白いでしょう。「MakeCode」のビジュアルプログラミング手法は、JavaScriptのコードを書く感覚を養う準備になる可能性が高く、将来的にその技術的な経験が連結することを期待できます。

同じプログラムをJavaScriptで表示したところ。上部のトグルボタンで切り替えられる

簡単なプログラムでできる機能から始めよう

 なお、こうした機器を使う場合、子どもの発想で機能を考えてそれを実現するプログラムを組みたいと思うかもしれません。子どものアイデアを生かしたいという考え自体はとても良いことで大賛成なのですが、多くの場合、アイデアを生かした機能を実現するためには、意外と難しいプログラムを組まなければならなくなります。それは初心者の大人にも子どもにとってもとてもハードルの高いことです。

 ですから、最初はプログラムの難易度は無理せず、チュートリアルや、簡単そうなサンプルのまねや部分変更からチャレンジして、すぐに形になるものを作ってみることをおすすめします。子どものアイデアを大人がプログラムしてしまうのではなく、子どもがプログラムの内容を理解できるレベルで楽しむことを意識してみてください。

 例で作成したような、ボタンを押したらアイコンが表示されるだけのシンプルな機能と簡単なプログラムだとしても、「micro:bit」を工作に組み込めばアイデア次第で面白い演出ができるはずです。そこで子どものアイデアを存分に発揮してもらうのも良いですね。

紙筒に四角い窓を開けて内側にmicro:bitをセットするだけでも、電光掲示つきの装置のような雰囲気に。もっと作り込めば凝った演出もできる
身に着けるには、ボタン電池を使えるバングルモジュールが便利。micro:bitと重ねてねじ止めし、マジックテーブが通せる。腕時計のように手に巻きつけられる

 プログラム作成画面の[ホーム]にはチュートリアルや作例が豊富なのでぜひこれらを活用するとよいでしょう。書籍などでもサンプルは見つけられますから、さまざまな機能のプログラミングをぜひ楽しんでください。