Blender ウォッチング

無料のモデリングツール「Blender 3.6」はUVアイランドを効率的に配置! 新登場の人体ベースモデルも便利

人体ベースモデルの利用方法を解説

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

UVのレイアウトを自動的に効率よく梱包してくれる新しいUVパッカーエンジン

 6月27日(GMT)、「Blender 3.6」が公式リリースされました。

 今回は「Blender」のUVパッキングの大幅なアップグレードと、v3.6リリースと同時に公開されたフリーの人体ベースモデルについてご紹介します。

UVパッカーの大幅なアップグレード

 UVを梱包する機能(UVパッカー)が大幅にアップグレードされました。

 UVの梱包(UVパッキング)とは、現在の展開済みの「UVアイランド」(UVの面がひとかたまりになったもの)を、できるだけ隙間を埋めて効率よく「テクスチャ空間」に自動で収める機能です。UV展開とはまた別の物であることに注意してください。

 従来もこの機能はありましたが、あまり複雑な梱包はしてくれず、オプションもほとんどありませんでした。「Blender」ではすでに、テクスチャ空間を複数作成可能な「UDIM」が利用可能ですが、今でもゲームのようなリソースの厳しい環境でのリアルタイムコンテンツ用アセット作成では役に立ちます。

使用方法

 まずは使用方法を再確認してみましょう。

  1. 画面上部の[UV編集]タブをクリックし、「UV編集ワークスペース」に切り替えます。
  2. 梱包する「UV」を選択します。
  3. [UV]メニューから、[UVアイランドを梱包]を実行します。
[UV編集]タブ(①)をクリックし、梱包する「UV」を選択(②)後、[UV]メニュー(③)-[UVアイランドを梱包](④)を実行

 表示されたパネルの[OK]ボタンをクリックします。プログレスバーがステータスバーに表示され、少しするとUVが梱包されます。

表示されたパネルの[OK]ボタンをクリックすると、プログレスバーが表示された後にUVが梱包される

パネルによる設定の変更

 上記のように、新しい[UVアイランドを梱包]機能では、オプションの変更は実行後ではなく、実行前に設定パネルがポップアップ表示され、細かな設定を行うようになりました。

 処理方法や、回転・スケール変更の操作など、新しい設定も追加されており、その中の一部の設定についてご紹介します。

形状の処理方法の選択が可能に

 今回のアップグレードの目玉がこれです。デフォルトの[正確な形状(凹型)]は穴や凹みのある複雑な形状の「UVアイランド」も利用して梱包してくれます。

 [境界の形状(凸型)]では各UVアイランドを包む最小の凸形状(凸包)を使用し、凹んだ部分や穴の開いた部分には配置しないようになります。

 そして[バウンディングボックス]は各UVアイランドが入る最小の矩形を使用します。高速ですが他の方法と比べ効率は劣ります。

[形状の処理方法]設定
各処理方法によるパッキングの違い。モデルとUVレイアウトは以前のチュートリアル記事より

ピン止め機能との併用の強化

 「ピン止め」機能は、現在のUVを固定し、展開の影響などからそのUVを除外する機能です。以前のこの機能でもピン止めに対応していましたが、v3.6では、そのON/OFFや、ロック方法が切り替えられるようになりました。

 例えば、方向が正しいUVアイランドの回転はせず、スケールや位置をだけを変更して自動的に詰めてもらうようなこともできます。

[ピン止めアイランドをロック]チェックボックスと[ロック方法]オプション

人体メッシュの公式アセットが追加

 「Blender」公式のアセットとして、人体のベースメッシュモデルが追加されています。

 ハイポリ(最大分割レベルで約68万頂点)のリアルタイプ(男女)と、比較的ローポリ(約1万2千頂点)なデフォルメタイプ(男女)、そして頭部のみや目や手足、歯と歯茎(歯みがき講習で使うアレ)、さらに骸骨といった部位のモデルも入っています。

 公式のデモファイルページからダウンロード可能です。

デモファイルの中の3Dビューポート(クリックで画面全体)。オブジェクトを選択しようとして面くらった人は新たにワークスペースを追加してみよう

 アセットフォルダーに入れ、アセットブラウザーからドラッグ&ドロップでアセットとして利用もできますが、インスタンスとして追加されるため、実際のベースデータとして利用するには、[オブジェクト]メニューから[適用]-[インスタンスを実体化]を実行する必要があります。

アセットブラウザーからドラッグ&ドロップすると「インスタンス」として追加されるので、さらに編集やスカルプトを行うには、[オブジェクト]メニューから[適用]-[インスタンスを実体化]を実行する必要がある

 残念ながら頂点グループはついていないのでアニメーションやポージングには少し手間が必要ですが、「UVマップ」や「面セット」(マスク用に面を色分けしてまとめる機能)、マルチレゾリューション(細部に合わせて複数解像度を手動で切り替えてスカルプトする機能)が設定済みで、主にスカルプト用途に便利です。

スカルプトモードで見ると面セットが部位ごとに設定されているのがわかる。面セットは[ツールプロパティ]-[ブラシ設定]-[詳細設定]-[面セット]で自動マスクとして利用可能

 なお、ライセンスは「CC0」であるため、どのような用途にも利用可能で、作者の表示やライセンスの継承の必要もありません。

終わりに

 今回は「Blender 3.6」のUVパッカーと、人体ベースメッシュモデルについてご紹介しました。UVパッカーは面白いようにギチギチに詰めてくれたりするので、ぜひ自分で試してみてください。