年末年始に試したいWindows 10最新機能

第1回

Windows 10の「メモ帳」はいざという時頼れるツールに

Linuxの改行コードをサポート、ズーム機能なども追加

「Windows 10 October 2018 Update」の「メモ帳」

 データ損失の不具合で10月初めの公開直後に提供が中断されてしまうなど、トラブル続きの「Windows 10 October 2018 Update」でしたが、その後の更新で問題は解決。12月中旬にはすべての“上級ユーザー”に配信対象が拡大され、ようやく態勢が整ってきました。この年末年始にアップグレードを検討しているユーザーも少なくないのではないでしょうか。

 そこで、本連載では「October 2018 Update」で注目したい機能を全7回にわたって紹介していきたいと思います。第1回となる今回は、大きな変更が加えられた「メモ帳」を取り上げてみたいと思います。

長い間“ほったらかし”だった「メモ帳」

「Windows 2000」時代の「メモ帳」

 「メモ帳(notepad.exe)」は「Windows 1.0」からOSに付属している息の長いアプリです。しかし、フォントの変更がサポートされたことや、64KiB以上のサイズのテキストファイルを扱えないという制限が取り払われたことを除けば、機能・デザインともに長い間大きな変化はありませんでした。

「メモ帳」が目覚ましく進歩した「October 2018 Update」

 ところが、「October 2018 Update」ではその状況が一変。多くの新機能が追加されました。その嚆矢が、開発者向けイベント“Build 2018”で華々しく発表された改行コード“LF”のサポートです。

「メモ帳」がLinuxの改行コードをサポート

 改行コードというのは、テキストの“改行”を表す特殊な文字(制御文字)のこと。一般的に“キャリッジリターン(CR:0x0D)”と“ラインフィード(LF:0x0A)”の2つをいい、Windows環境では“CR+LF”の組み合わせが利用されてきました。

 しかし、Linuxでは“LF”のみで改行を表すのが普通。そのため、Linuxで作成されたテキストファイルを「メモ帳」で開くと改行が認識されず、すべて一行で表示されてしまい大変不便でした。

「April 2018 Update」の「メモ帳」では“LF”改行コードが認識されない

 「October 2018 Update」の「メモ帳」は、“CR+LF”と“LF”に加え、古いMacで使われていた“CR”のみの改行コードも認識します。テキストファイルを作成する際は“CR+LF”になりますが、他のプラットフォームで作成されたものを読み書きする分には困らなくなります。“Windows Subsystem for Linux(WSL)”をはじめとする相互運用性向上の一環といえるでしょう。

「October 2018 Update」の「メモ帳」。改行コードが“Linux(LF)”として認識されているのがステータスバーの表示からわかる

 これが呼び水となり、「October 2018 Update」ではほかにもいくつかの機能強化が施されました。

 1つ目は、[Ctrl]+[+]キーや[Ctrl]+[-]キーで利用できるズーム機能。わざわざフォントのサイズを変更しなくても、文字の表示を一時的に拡大・縮小できます。プレゼンテーションなどで、画面を遠くにいる他人に見せたい場合に役立ちそうです。

 ちなみに、この機能は[表示]-[ズーム]メニューや[Ctrl]キーを押しながらマウスホイールを操作することでも利用可能。元の表示倍率へ戻したい場合は[Ctrl]+[0]キーを押せばOKです。

[Ctrl]+[+]キーや[Ctrl]+[-]キーで利用できるズーム機能

 2つ目は、検索・置換の“折り返し”機能です。テキストの検索や置換を行う際、従来の「メモ帳」はファイルの最後(EOF)に到達したあとに[次を検索][置換して次に]ボタンを押すと“(キーワード)が見つかりません”というアラートが現れ、そこで処理が終了してしまいました。

 しかし、「October 2018 Update」で検索・置換ダイアログに新設された[折り返しあり]オプションを有効化すれば、ファイルの先頭に戻って検索・置換を続行することが可能。また、検索・置換ダイアログをいったん閉じても、検索キーワードが保持されるようになったのも細かいながら気の利いた改善といえます。

検索・置換の“折り返し”機能

 3つ目は、選択テキストを“Bing”検索する機能。テキストを選択して右クリックし、[Bing で検索]コマンドを実行すると、Webブラウザーで検索結果を閲覧できます。“Google”ではないのが少し残念ですが、ちょっと調べたいときに便利。

 そのほかにも、以下の機能がサポートされました。

  • ワードラップ(折り返し)が有効な場合にもステータスバーを表示
  • 大きなファイルを開くときのパフォーマンスが向上
  • [Ctrl]+[Backspace]キーで前の単語を削除
  • 矢印キーはテキストを正しく選択解除してからカーソルを移動するように
  • ファイルを保存しても行番号と列番号が1にリセットされなくなった
  • 画面に完全に収まらない行を正しく表示するように

 まだまだサードパーティ製のテキストエディターに比べると機能は貧弱ですが、「メモ帳」しか使えないという状況はあり得ます。高機能になるあまり動作速度や操作性が損なわれても困りますが、シンプルさを失わない改善であれば歓迎しない理由はありませんよね。

これからも継続して改善 ~マルチプラットフォームにやさしく!

 なお、「October 2018 Update」以降も「メモ帳」の改善は継続されるようです。中でも注目はBOMなしUTF-8がサポートされることでしょう。

 “BOM(バイトオーダーマーク)”は、エンディアン(バイトの並び順)を明示するためにテキストデータの先頭に挿入される目印ですが、Webの世界ではBOMなしUTF-8が主流で、入ってるとうまく処理できないケースもあります。BOMなしUTF-8がサポートされ、デフォルトの保存形式になれば、データのやり取りでトラブルが発生することも減るでしょう。これも相互運用性を向上する改善の一環といえます。

 「メモ帳」はわざわざ第一線で利用するテキストエディターではありません。だからこそ、利用するのは“非常時”であるわけです。“Windowsはデファクトスタンダード”と胡坐をかいていられなくなった時代であるからこそ、「メモ帳」もマルチプラットフォームにやさしくなるべく、進化が求められているわけですね。