Windows Insider Preview

Windowsが起動しなくなったときに助けてくれる「クイック マシン リカバリー」とは?

基本的な仕組みから設定まで。エディションによっては既定無効

 このコーナーでは、「Windows 11 Insider Preview」ビルドでテストされている最新のOS機能を紹介します。ただし、テストの結果、紹介した機能が製品版OSに搭載されないこともあります。あらかじめご留意ください。

「クイック マシン リカバリー」(Quick machine recovery:QMR)。「迅速なマシンの回復」とも

  「クイック マシン リカバリー」(Quick machine recovery:QMR) は、Windowsが起動できないといった重大なエラーが発生した場合に、デバイスを自動で復旧・回復するために開発が進められている機能だ。日本語環境では 「迅速なマシンの回復」 と表記されていることもある。

 2024年7月、セキュリティソリューション「CrowdStrike」に関連する広範な障害があったが、本機能はそうした事故からの復旧を支援するのが目的。2024年11月に開催された「Microsoft Ignite」で発表されたWindowsのセキュリティと回復力に対する取り組み「Windows Resiliency Initiative」の一環で、本来は大量のデバイスを管理するIT管理者の負担を軽減するためのものだが、もちろん個人ユーザーにとっても有用だろう。

 「クイック マシン リカバリー」の回復プロセスは、以下のフェイズで実施される。

「クイック マシン リカバリー」の回復プロセス
  1. デバイスのクラッシュ検知:デバイスの起動が繰り返し失敗する場合、システムが自動的に問題を検出し、回復プロセスを開始する
  2. 回復プロセスの開始:デバイスを「WinRE」(Windows Recovery Environment)回復環境で起動し、「迅速なマシンの回復」を開始する
  3. ネットワークへ接続して解決策をスキャン:ネットワーク接続を確立し、「Windows Update」で解決策が提供されていないかスキャンする
  4. 修復:解決策があれば、ダウンロードして適用する。解決策が見つからない場合は、あらかじめ設定されたソリューションを探す(スキャン)間隔に基づき、自動で検索すプロセスを再試行する
  5. 再起動して解決策を適用:修復が適用されると、デバイスを再起動する。修復に失敗した場合、デバイスは再び「WinRE」回復環境で再起動し、スキャンと回復のプロセス(2以降)を繰り返す
「クイック マシン リカバリー」回復プロセスの処理の流れ。クラウド(Windows Update)スキャンを行うか、プロセスを自動化するかのオプションがあり、「設定」アプリでコントロールできる

 関連する設定は、[システム]-[回復]-[クイック マシン リカバリー]設定ページで変更できる。この設定ページは米国時間6月2日付けでDevチャネルでリリースされた「Windows 11 Insider Preview」Build 26200.5622(KB5058512)以降で展開されており、Betaチャネルでもすでに利用できるようだ。

[システム]-[回復]-[クイック マシン リカバリー]設定ページ

 オプションは大きく分けて、以下の2つがある。そのほかにも、スキャンの間隔やデバイスの再起動の間隔を指定できる。

  • クイック マシン リカバリー:上記の回復プロセスのフェイズ3を実施する。無効化した場合は、ローカル回復オプションとしてスタートアップ修復を試みる(クラウドで解決策のスキャンを行わない)
  • ソリューションが見つからない場合は検索を続けます(自動化):上記オプションが有効な場合のみ、ON/OFFが可能。回復プロセス(解決策のスキャン・適用・再起動)を自動化するか否かを指定する。無効化した場合は、途中で手動での介入が必要となる
「WinRE」(Windows Recovery Environment)回復環境にある「迅速なマシンの回復」。自動化を無効化すると、手動で操作が必要になることも

 Homeユーザーの場合、[クイック マシン リカバリー]オプションはで既定有効。自動化オプションは既定で無効化されている。

 Pro/Enterpriseの場合、いずれのオプションも既定で無効だ。必要に応じて有効化するとよいだろう。

 なお、スキャンの間隔は10分から12時間の間で指定可能(既定は30分、推奨値)。再起動の間隔は180分から72時間の間で指定できる(既定は180分、推奨は72時間)。

 また、「クイック マシン リカバリー」の設定はコマンドでも確認できる。

# 管理者権限で実行
reagentc.exe /getrecoverysettings

 テストモードも提供されており、「クイック マシン リカバリー」の実際の動作をシミュレートできる。

# 管理者権限で実行
reagentc.exe /SetRecoveryTestmode

#次の起動時に「WinRE」を起動するようにWindowsを構成
reagentc.exe /BootToRe

 適用された修復は、[Windows Update]-[更新の履歴]設定ページにある[品質更新プログラム]セクションで確認可能だ。

[Windows Update]-[更新の履歴]設定ページ