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マイクロソフトが本気(マジ)になったAI活用技術に注目! 「Microsoft Ignite 2022」発表まとめ

「Loop」のプライベートプレビュー、「DALL-E 2」を組み込んだ「Microsoft Designer」 ほか

「Microsoft Ignite 2022」

 米Microsoftが主催する年次最大級の開発者向けテクニカルカンファレンス「Microsoft Ignite」。今年2022年は10月13日~14日(日本時間)の期間にかけて開催され、オンライン配信イベントに加え、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行後、初となるSeattle Convention Center(米ワシントン州シアトル)でのリアルイベントとの、ハイブリッド開催の形式で実施された。

 毎年恒例の「Microsoft Ignite」は、ITエンジニアや開発者向けに同社の最新ツールやソリューションを紹介するとともに、スキルアップにつながる最新情報が披露されるビッグイベント。ここ数年ではWindowsやSurfaceデバイス以外にも、ハイブリッドワーク、AI、次世代ビジネス、セキュリティソリューションについて言及されることも多い。

 今年の基調講演では、グローバル向けに同社のCEO サティア・ナデラ氏が登壇。開発者向けクラウドプラットフォーム「Microsoft Cloud」の利用によって、企業がより少ないコストと労力で、より多くのイノベーションを実現できることを強調した。また、AIを効率化実現の究極ツールとして「Microsoft AI」と「OpenAI」との共同研究の成果を改めてアピール。OpenAIの画像生成AI「DALL-E 2」を組み込んだデザインツール「Microsoft Designer」といった新製品も紹介された。

「Microsoft AI」と「OpenAI」を紹介するサティア・ナデラ氏

 本稿では「Microsoft Ignite 2022」の期間中、弊誌にて取り上げたトピックスをまとめて紹介する。Microsoftが提供する最新技術のトレンドや将来への取り組みを知りたい開発者だけでなく、一般のMicrosoftユーザーも必見だ。

Microsoft Ignite Day 1 Opening Keynote
Satya Nadella Full Keynote Microsoft Ignite 2022

「Microsoft Ignite 2022 Book of News」のページ

「Notion」対抗サービス「Microsoft Loop」アプリが間もなく登場へ

「Microsoft Loop」アプリのプライベートプレビューを発表

 「Microsoft Loop」アプリのプライベートプレビューが発表された。

 「Microsoft Loop」は、非同期型コラボレーションのためのデータ共有システム。リアルタイム・共同編集が可能な「Loop」コンポーネントを利用することで、さまざまな「Microsoft 365」アプリに埋め込んでのやり取りが可能になる。

 今回アナウンスされた「Loop」アプリを利用すると、「ワークスペース」や「ページ」といった単位で「Loop」コンポーネントを使ったドキュメントを編集・管理可能。ほかにも、「Loop」コンポーネントを利用できる範囲をWindows版「Outlook」、Web版「Word」、「Microsoft Whiteboard」にも拡大するなど、今後のアップデート情報も公開されている。

「Microsoft Power Pages」の一般提供がスタート

「Microsoft Power Pages」

 ローコード・ノーコードでビジネス向けWebサイトが作成できるツール「Microsoft Power Pages」の一般提供を開始したことが発表された。

 「Power Pages」は、テンプレートのカスタマイズなどの簡単な操作で、ビジネス向けのWebサイトが構築できるツール。ローコード開発プラットフォーム「Microsoft Power Platform」の5番目となる新製品だ。一般提供の開始に合わせて、サブスクリプションプランと従量課金制プランからなるライセンスプランの公開と機能追加も実施された。

校正機能「Microsoft エディター」がAIでさらに強化

AI校正機能「Microsoft エディター」

 AI校正機能「Microsoft エディター」のアップデートが発表された。

 「Microsoft エディター」(Microsoft Editor)は、ユーザーが入力した文章をチェックしてスペルや文法のミスを指摘したり、より丁寧・明瞭な表現を提案してくれる機能。

 今回発表されたアップデート情報では、メールやチャット、ドキュメントなどに相応しくない言葉遣いを検出すると、より柔らかい代替表現を提案してくれる「トーンの提案(Tone suggestion)」や、AIで冗長な表現を検出し、わかりやすい別の文章を提案してくれる新機能「コンサイスネス(Conciseness)」などがアナウンスされている。

画像生成AI「DALL-E 2」を組み込んだ「Microsoft Designer」が発表

「Microsoft Designer」が発表

 「Microsoft 365」ファミリー初のグラフィックデザインアプリ「Microsoft Designer」が発表された。

 「Microsoft Designer」は、「PowerPoint」でスライドを作成する際にデザインを提案してくれる「デザイナー」(デザインのアイデア)機能から生まれたアプリ。OpenAIの画像生成AI「DALL-E 2」を活用し、自然言語で指示するだけでさまざまなデザインを提案してくれる。

 現在、プレビュー版への早期アクセスを「designer.microsoft.com」で受付中。将来的には「Microsoft Edge」にも統合され、ソーシャルメディアへの投稿や電子メールのデコレーションなどに、このAIベースのグラフィックツールが利用できるようになるという。他のOfficeアプリへの展開も期待したい。

検索しても出てこない画像を代わりにAIで生成する技術を「Bing」に実装

「Image Creator from Microsoft Bing」

 「Image Creator from Microsoft Bing」を発表。ネットで画像を検索してもピッタリ一致するものが見つからないとき、「Bing」が代わりにそれを作成してくれる。

 これは「Microsoft Designer」と同様、OpenAIの画像生成AI「DALL-E 2」が組み込まれており、自然言語で付けたタイトルに応じて、ネットには転がっていない画像をいくつか生成してくれるという新技術。まずは一部の地域で限定プレビューを行い、フィードバックを集めながら、学習とエクスペリエンスの改善に努めるとしている。

クリエイター向けの新サイト「Microsoft Create」がオープン

新サイト「Microsoft Create」が公開

 新サイト「Microsoft Create」(create.microsoft.com)が発表された。

 クリエイターによる利用を念頭に置いて設計された新しいWebサイトで、創作活動に役立つ「Microsoft 365」アプリを1つにまとめることで、インスピレーションを得たり、コンテンツを作成する時間を節約したり、スキルを向上させることができるという。特にアプリを起動してコンテンツを作成するのではなく、作成したいコンテンツからアプリを起動する点がポイント。サイトの利用は誰でも可能だ。

次期「フォト」アプリに「iCloud Photos」が統合

新しい「フォト」アプリに「iCloud Photos」を統合すると発表

 新しい「フォト」アプリに「iCloud Photos」を統合することが発表された。PCからでも気軽に「iCloud Photos」の写真を扱えるようになる。

 「フォト」アプリに統合された「iCloud Photos」は「OneDrive」と同様、サイドナビゲーションペインからアクセス可能。[すべての写真]ギャラリービューにも他の写真と一緒に表示されるという。

「Office.com」「Office」アプリは「Microsoft 365」アプリへ

「Microsoft 365」アプリを発表

 従来の「Office.com」、Windows版「Office」アプリ、「Office」モバイルアプリ(Android/iOS)の後継となる「Microsoft 365」アプリが発表された。

 「Microsoft 365」は「Teams」、「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「Outlook」、「OneDrive」などのアプリケーションを含む、同社のクラウド型生産性プラットフォーム。2020年4月より開始された「Microsoft Office」から「Microsoft 365」へのリブランディングの総仕上げになるとみられる。今回の変更によるエンドユーザーへの影響はブランドの変更のみ。「Word」や「Excel」、「PowerPoint」、「Outlook」といったOfficeアプリが廃止されることはない。

Officeアプリの新UI「パーソナル ツールバー」を発表

「Office」アプリの新しいユーザーインターフェイス「パーソナル ツールバー」(Personal toolbar)

 「Microsoft Office」アプリの新しいユーザーインターフェイス「パーソナル ツールバー」(Personal toolbar)が発表された。

 「パーソナル ツールバー」はユーザーのコマンド履歴を元に、AIがそれぞれの使い方に適したカスタマイズツールバーを提案してくれる新機能。従来のリボン(クラシック リボン)とともに使えるよう設計されており、必要なときにクリックするだけでいつでも利用できる。また必要に応じて追加、削除、並び替えといったカスタムをユーザー側で行なうことも可能だ。

「Microsoft Teams」でのプレゼンを補助する「PowerPoint Live」機能を強化へ

「PowerPoint Live in Microsoft Teams」の機能強化を発表

 「Microsoft Teams」を使ったビデオ会議でのプレゼンテーションを補助する「PowerPoint Live in Microsoft Teams」の機能強化がアナウンスされた。

 一般提供が開始された「Cameo」(カメオ)機能を使うと、発表者はスライド内に形や場所を自由にレイアウトして、リアルタイムのカメラ映像を埋め込むことが可能。さらに近々、参加者が他の参加者の画面に影響を与えずにスライドを拡大表示できる「Magnifier」(拡大鏡)機能も利用できるようになるほか、発表者の音声を自動で字幕表示できるキャプション機能の追加や、スライドをハイコントラスト表示にする機能の改善も予定されている。

「Clipchamp」が「Microsoft 365」ファミリーに

「Clipchamp」

 無償のビデオ編集アプリ「Clipchamp」が「Microsoft 365」ファミリーに加わったことが発表された。「Microsoft 365」アプリケーション群に初めて、無償のビデオエディターが追加されることになる。

 「Clipchamp」は、Microsoftが最近買収したオンラインビデオ編集サービス。オンラインツールでありながら、プロ顔負けのビデオを製作できるのが特徴だ。今回の追加により、「Clipchamp」のプレミアム機能が「Microsoft 365 Personal」「Microsoft 365 Family」サブスクリプションに含まれることになる。

「Windows 365」アプリがパブリックプレビュー

「Windows 365」アプリのパブリックプレビューを発表

 「Windows 365」アプリのパブリックプレビューが発表された。

 「Windows 365」は、Microsoftのクラウドサービス「Azure」上で動作する、Windows 10/11仮想環境へのリモートアクセスが可能になるソリューション。今回パブリックプレビューされた「Windows 365」アプリは、このソリューションの専用クライアントだ。多要素認証(MFA)や「Microsoft Authenticator」アプリへの対応など、Webブラウザーやリモートデスクトップ接続クライアントを利用するのと比べてメリットがあるという。

「Microsoft Edge Workspaces」など「Microsoft Edge」の新機能を発表

新機能「Microsoft Edge Workspaces」

 Webブラウザー「Microsoft Edge」の新機能が発表された。

 ブラウジングタスクをワークスペースに参加するユーザー間で共有できるコラボレーション機能「Microsoft Edge Workspaces」、よく利用する・たまに利用するアプリを閲覧画面右側のバーに配置する「サイド バー」のほか、順次導入予定の新しいアクセシビリティ機能などがアナウンスされている。