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【第8回】
ハードディスクと火事オヤジ
(02/12/02)
窓の杜高校、超パソコン部の部室。
あらあら、めも理ちゃん。今日もパソコンの前でフリーズしていますね。
一体どうしたのでしょう?
データを消してしまった!
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……大切なデータを消してしまった。
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どうしたんですか、めも理ちゃん。顔が蒼いですよ。
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間違って大切なデータを消してしまったの。
そういえばどこかで、『ハードディスクのデータを復活するとか何とか……』って聞いたことがあるわ。もしかして、データを消した場合、ハードディスクの中にはまだデータが残っているの。
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そうですね、残っていますよ。
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でも消してしまったのよ。消したものが何で残っているの?
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まあ、ハードディスクの中では、実際に消しているわけではないですからね。
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へっ? 一体、ハードディスクの中では何が起こっているの?
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それじゃあ、ちょうどよい機会なので、ハードディスクの仕組みについてお勉強をしますか?
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うっ、勉強は嫌いだけど、それでデータが元に戻るならやるわ。
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それじゃあ、ハードディスクの仕組みを見ていきましょう。
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ハードディスク町
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めも理と窓太の4コマまんが 「ハードディスク」 |
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説明の前に、めも理ちゃんには、“ハードディスク町”の町長さんになってもらいます。
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町長? いいわよ。私が町の絶対君主ね。
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え~、そういうことにしておきましょう。このハードディスク町の中にあるそれぞれの家が、データに相当します。
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じゃあ、“鈴木.txt”というデータが鈴木君の家の場所に置いてあって、“佐藤.txt”というデータが佐藤君の家の場所に置いてあるということね。
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そうです。さすがですね。
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当たり前よ。何せ私は、全能の町長なんだから。
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それじゃあ、めも理ちゃん。このデータがどういう方法で管理されているか知っていますか?
実際の町では建物の場所が登記簿で管理されているように、パソコン上では、ファイルシステムによってデータの場所が管理されているのです。
ですから、建物が取り壊された場合に登記簿が変更されるように、データが削除された場合には、ファイルシステムの情報が変更されるのです。
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現実の町では、建物が取り壊されたら何も残らないわよね。じゃあ、データが削除された場合にはどうなるの?
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ハードディスクでは、データがファイルシステムから抹消されるだけで、現実のデータはそのままハードディスク上に残り続けるのです。
現実世界で言うならば、登記簿だけ書き換えられて、実際の建物がそのまま残っているような状態です。
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じゃあ、登記簿上には存在しないけど、その場所に行くと建っている幽霊屋敷みたいなものになるの?
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そうなんです。今日はめも理ちゃん、冴えていますね。だから、パソコン上では、データが削除されているように見えても、ハードディスクをしらみつぶしに探すと、実はデータが残っているということになるのです。
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そうか、じゃあこのパソコンのハードディスク上にも、削除してしまったデータが残っているというわけなのね。
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そういうことです。
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よかったわ、安心したわ。
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とはいえ、前に家が建っていた場所に新しい家が建ってしまった場合には、前の家は完全になくなってしまいます。同じ場所に2軒の家は建てられないので当然ですよね。
ハードディスクも同じように、前のデータが書き込まれていた場所に新しいデータが書き込まれた場合には、前のデータが完全になくなってしまいます。こうなってしまうと、どんなに探してもデータは見つからなくなってしまいます。
ですので、データを復旧させたい場合には、早めに復旧させて下さいね。
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分かったわ。善は急げということね。
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データがなくなるといえば、ハードディスクのエラーが起こった場合にもデータがなくなることがあります。
ハードディスクの一部に障害が発生したら、ファイルシステムには場所が書かれていても、実際そこに行ったらデータがないという状態になるのです。
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地震や火事が起こって家がなくなったけど、登記簿上には情報が残っている状態と一緒ね。いつどんな災害が起こるか分からないから、気をつけないといけないわね。
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そうです。
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よし、地震、雷、火事、オヤジは、私のパソコンには近づけさせないようにするわ!
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オヤジさんは関係ないですよ。
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部室
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なるほど。じゃあ、復旧できそうね。
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そうですね。
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こんなこともあろうかと、なくなったデータを探しやすいように、きちんとハードディスクを分解しておいたの!
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えっ!
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どうしたの、窓太?
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……非常にいいにくいんですが、ハードディスクは分解したら壊れてしまいますよ。
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えっ! ……ほかのデータも使えなくなっちゃった。
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※ 誤ってゴミ箱からも削除してしまったデータは、「復元」というソフトで復旧できます。
今回出てきた用語の解説
【ハードディスク】 データを記録しておく装置。その名の通り、実際にデータを保存する部分は金属やガラスなどの硬い円盤のような形をしている。通常は頑丈なケースの中に入っているので、その姿を見ることはできない。ちなみに、フロッピーディスクはふにゃふにゃの円盤という意味。
【ファイルシステム】 ファイルをどこに記録しているかを管理するシステム。管理する方式を表すことも多い。ファイルを管理する方式には、FATやNTFSとといった種類がある。
ハードディスクなどでデータを記録する領域は、このファイルシステムを保存している領域と、実際にデータを保存している領域とに別れている。
例えば、Windowsでゴミ箱からデータを消した場合は、このファイルシステム領域上の情報が書き替えられるだけで、実際のデータ自体はまだデータを保存している領域上に残っている。
【○○.txt】 テキスト形式のファイル。最近のWindowsは、通常では拡張子を表示しないようになっているが、実際のファイル名は“○△□.abc”という形式で、この“abc”が拡張子にあたる。OSはこの拡張子を見てどんな形式のファイルかを判断する。
【ハードディスクのエラー】 データ上のエラーと、機器の物理的エラーがある。データ上のエラーの場合は、「スキャンディスク」を使い修復することができる。「スキャンディスク」は、[スタート]ボタンから[プログラム]→[アクセサリ]→[システムツール]→[スキャンディスク]で呼び出せる。
スキャンディスクで直らない場合は機器の物理的なエラーが考えられる。この場合は、ハードディスク内のデータを保存している円盤の表面に物理的な傷がついていることが多い。この傷はどんどん広がるので、早めの買い替えが得策である。
(クロノス・クラウン:柳井 政和)