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【第17回】
めも理のポケットとクリップボード
(03/03/03)
窓の杜高校、超パソコン部の部室。
あらあら、めも理ちゃん。今日は部室でぼーっとしています。
一体どうしたのでしょう?
宿題は忘れないわよ
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はー、暇だわ。
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めも理ちゃん、暇そうですね。宿題はやらなくていいんですか? いつも宿題を忘れてばかりいるみたいですけど。
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ふふ~ん。今日は大丈夫よ。宿題を忘れないように、ちゃんとメモを取っているから。
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本当ですか?
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何よ、信用しないの。ほらっ。ポケットの中に入れているお菓子の包み紙を見て。ここに、きちんと宿題のメモを取っているでしょう。
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あれ、本当ですね。確かに書いてあります。
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私はいつもポケットにお菓子を入れているでしょう。だからお菓子を食べたいときには、必ずポケットに手を突っ込むの。
ポケットへ手を入れたときにメモも見つけてしまうから、そのメモは何度も見ることになるでしょう。だからメモに書いたことを忘れないですむのよ。私のポケットは、いつでも確認できる便利なメモ置き場というわけよ。
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なるほど。めも理ちゃんのポケットは、まるでクリップボードみたいですね。
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クリップボード? 何それ。
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一時的にデータを保存しておく場所ですよ。
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……はっ?
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いい機会ですから、クリップボードの勉強をしましょう。
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むっ、今日は宿題をやるつもりなんだから、これ以上勉強の時間を増やさないでよ。
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クリップボード
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めも理と窓太の4コマまんが 「ポケットの中」 |
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私は宿題をしなくてはいけない忙しい身なんだから、話は手短に済ませてね。
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えぇー。さっきまで暇だって言っていたのに。……トホホ。
クリップボードとは、後で使うデータを一時的に保存しておく場所のことです。
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一時的に? 普通に保存したらいいんじゃないの。
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パソコンを使っていると、色んなデータをコピーしたり、貼り付けたりしますよね。
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ええ、するわ。
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めも理ちゃんは不思議に思ったことはないですか? このコピーって、データをどこにコピーしているのか。貼り付けって、データをどこから貼り付けているのか。
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あれ? そういえばそうね。一体どこにコピーして、どこから貼り付けているのかしら。
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じゃあ、このコピーや貼り付けするデータは、ハードディスクにファイルとして保存すると仮定しましょう。
そうすると、データをコピーするときには一旦そのデータをファイルに保存することになりますよね。そして、データを貼り付けるときには、再度そのファイルを読み込むことになりますよね……。
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保存して、読み込んでって、とても面倒そうね。毎回、保存とか読み込みをするのは大変よ。
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そうですね。めも理ちゃんがメモを利用する場合でいうならば、学校で宿題のメモを取るときに、カバンからノートを取り出してメモを取り。ノートをカバンに入れ。部屋に帰ってノートをカバンから取り出して。ノートに書いたメモの内容を確認するようなものですから。
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それは面倒ね。そもそも家に帰ったら、ノートなんて見ないもの。
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多分そうだと思います。だからめも理ちゃんは、どこでも簡単に取り出せて、忘れることのない、ポケットにメモを入れておくんですよね。
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そうよ。
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パソコンでも同じです。後ですぐ使うようなデータをコピーする場合には、わざわざファイルとしてハードディスクに保存しません。いつでも簡単に取り出せるように、めも理ちゃんのポケットのような場所に保存するのです。
このように、データを簡単に取り出せる、データの保存場所のことをクリップボードと呼びます。
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へー、便利にできているのね。知らなかったわ。
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クリップボードを知らなくても、めも理ちゃんは毎日クリップボードを使っていますよ。めも理ちゃんがコピーや貼り付けを行うたびに、実はクリップボードを使っているのです。
コピーを行うことで、データをクリップボードに保存して、貼り付けを行うときにはデータをクリップボードから取り出しているのです。
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むむっ、私はそんな高度なことをやっていたのね。
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そうなんです。ほかにも、クリップボードには長所があります。クリップボードを使えば、異なったアプリケーション間でも簡単にデータをコピーして貼り付けることができます。
クリップボードは、いろんなアプリケーションから共通に利用できるデータの置き場所です。なので、この場所を利用すれば、異なったアプリケーション間でも、簡単にデータをやり取りすることができます。
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ファイルを保存して、ほかのアプリケーションで読み込みなおしてという、面倒な手順を踏まなくてもいいってことね。
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そうです。めも理ちゃんがポケットにメモを入れて肌身離さず持ち歩いていれば、途中でクレープ屋に寄っても、鯛焼き屋に寄っても、どの場所でもそのメモを読み返すことができます。
パソコンでいうならば、どのアプリケーションを使っている最中でもクリップボードのデータを利用できるのと同じことです。
クリップボードを使えばファイルを保存したり、読み込んだりする必要がありませんので、作業効率がぐっと上がります。
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なるほど、クリップボードって、私のポケットのメモと同じでとても便利ね。
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このようにとても便利なクリップボードなんですが、実はちょっとだけ弱点もあります。最初に“一時的に保存”と言いましたが、そのことに関係しています。クリップボードでは、利用できるデータが通常は1つだけなのです。
新しいデータを保存したら、古いデータは消えてしまいます。
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えー、たった1つなの。
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そうです。でもまあ、普通に使う分には問題ないんですけど。
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もっとたくさん利用する方法はないの?
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オンラインソフトを使えば、手軽にクリップボードで利用できるデータの数を増やすことが可能ですよ。
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ポケットのお菓子
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クリップボードって、新しいデータを入れたら消えてしまうのよね。
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めも理ちゃんのポケットも似たようなものですよ。
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へっ、どうして?
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新しいお菓子をポケットに入れる前に、めも理ちゃんはポケットのお菓子を全部食べてしまいますからね。
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たっ、確かに食べているわ。
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今回出てきた用語の解説
【クリップボード】 アプリケーションが、データのコピーや貼り付け(ペースト)のときに、一時的にデータを保存しておく場所。通常は、新しいデータをクリップボードに保存すると、古いデータは消されてしまう。
いろんなアプリケーションが共同で使える場所なので、アプリケーション間でのデータの受け渡しにもよく使われる。
【コピー】 データを複製すること。また、アプリケーション上のデータの一部をクリップボードに保存することも指す。[Ctrl]+[C]のキーを押せば、コピーを行うことができるようにしているソフトも多い。
【貼り付け】 ペーストとも呼ばれる。複製したデータを貼り付けること。また、クリップボード上のデータを、アプリケーションに貼り付けることも指す。[Ctrl]+[V]のキーを押せば、貼り付けを行うことができるようにしているソフトも多い。
(クロノス・クラウン:柳井 政和)