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【第31回】
狭い廊下と回線の太さ
(03/06/16)
窓の杜高校、超パソコン部の部室。
あらあら、めも理ちゃん。今日はボロボロになって部室にやって来ました。
一体どうしたのでしょう?
おしくらまんじゅう
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うぐぅ。死ぬかと思ったわ。
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どうしたんですか、めも理ちゃん。何だか、ボロボロですね。
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もう、聞いてよ窓太。学食に行くための廊下が狭くて、毎日昼休みに通るたびに、押し潰されて大変なのよ。
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それはまるで回線が細い状態みたいですね。
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そういえば、回線が太いとか細いとか、先輩も時どき口にしているけど、回線の太さって何なの?
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そうですね、ちょっと分かり難いかもしれませんね。軽く説明することにしましょう。
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意味の変遷
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めも理と窓太の4コマまんが 「太い」 |
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まずは、回線について説明しますね。
回線とは、電話・電信などの信号(情報)が通る線路のことです。
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電話・電信などの信号が通る線路? どういうことなの?
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それじゃあ、廊下を想像してください。廊下は人が行き来していますよね。この行き来している人間が信号、廊下が線路と思って下さい。
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信号はちょうど、お昼ご飯を食べに行く学生のようなものというわけね。
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そうです。ではそれを踏まえた上で、パソコンの回線について説明をしますね。
パソコンをインターネットに接続するときには、電話線やLANケーブルをパソコンに接続していますよね。あれが、狭義でいう回線になります。
あの線の中を無数の信号が通っているのです。
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ふーん、あんな細い線の中を人が通行しているなんて知らなかったわ。そうとう太い回線じゃないと、人は通れないわね。
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いや、通っているのは電気の信号なんですけど。
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まあ、いいわ。それよりも気になることがあるわ。
さっき狭義って言ったでしょう。じゃあ、広義には違う意味があるの? 何だか、思わせぶりな説明の仕方ね。
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思わせぶりというわけではないんですが、順を追って説明した方が分かりやすいと思いましたから。
回線といえば、本来は線、ケーブルのことを意味します。しかし、回線という言葉が使われているうちにほかの意味も指すようになっていきました。線、ケーブルという意味から拡張して、ネットワークの通信状態なども指すようになってきたのです。
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ネットワークの通信状態?
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例えば学食に行く廊下の幅が広かったらどうなります?
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そうね、いっぱいの人が通れるようになるわ。学食の前で混雑することもなくなるし。早く学食にもたどりつけるわ。
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ネットワークの状態も、廊下と似たようなところがあります。多くのデータがスムーズに混雑なく、早く行き来できる状態もあれば、逆にデータがなかなか流れないような状態もあります。
データが多く早く流れる場合は、線が太いイメージ、逆にデータがあまり流れない状態は、線が細いイメージを人はもちます。
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確かにもつわね。
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そこで、データがうまく流れるような通信環境を“回線が太い”、逆にデータがうまく流れないような通信環境を“回線が細い”と言う習慣が生まれたのです。
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へー、じゃあ先輩たちは、実際にケーブルが太いとか細いという意味で“回線”という言葉を使っていたわけではなかったのね。
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そうなんです。さらに、もう少し続けて説明をしましょう。
インターネットは多くのコンピューターがつながったネットワークです。そのため、自分のつながっているコンピューターのさらに先のコンピューターの通信環境が、自分のパソコンの通信環境に影響を与えてしまいます。
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そういえば、そうね。自分のところだけが早くても意味がないものね。学食に行く途中の廊下が広くても、学食の中に細い道があれば、なかなか食事ができないものね。
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そこで、自分のつながっているコンピューターの、さらに先のコンピューターの通信環境がよい場合は、特に“バックボーンが太い”などという言い方もします。
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バックボーン?
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日本語で言うと“背骨”という意味です。インターネットの接続の中でも、特に通信事業者(プロバイダー)間を結ぶ大容量の通信回線をバックボーンと呼びます。
高速な通信を行う必要があったり、大量のデータを送受信しないといけないなど、インターネットの利用目的によっては、このバックボーンが太い業者を選ぶ必要があったりもします。
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太い、太い、太い
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太い太いって、今日の話は何だか気分の悪い話だったわ。
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めも理ちゃんの場合は回線が太いというよりは、二の腕が太いという感じですからね。
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むっ、せめて、ふくよかなとか言葉を選びなさいよ。
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じゃあ、ふくよかな回線とかですか?
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そうよ、ふくよかな回線よ。
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じゃあ、バックボーンがふくよかは?
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……ごめん、ふくよかな回線や、ふくよかなバックボーンって何だか変だわ。
分かったわよ。太い回線でいいわよ。ぐすん。
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今回出てきた用語の解説
【回線】 ケーブル、線などのこと。転じて、通信状態も指すようになる。
回線が太いといえば、通信状態が良好で、大量のデータをやり取りできること。回線が細いといえば、通信が劣悪で、小量のデータしかやり取りできないことを指すようにも使う。
【バックボーン】 通信事業者間を結ぶ大容量の通信回線。町の中を走る普通の道路に対して、町と町をつなぐ高速道路のようなもの。プロバイダー間や、重要な接続箇所を結ぶ回線を指す。
プロバイダーはユーザーに対して、この太い回線を細かく分けて、細い回線にして販売している。これは卸業者が大量に商品を仕入れて、小量ずつ顧客に売るようなものである。
(クロノス・クラウン:柳井 政和)