.
【第45回】
Javaと小学生とランドセル
(03/10/27)
窓の杜高校、超パソコン部の部室。
あらあら、めも理ちゃん。今日は部室に何か持ってきたようです。
一体、何を持ってきたのでしょう?
小学生
|
あれ、めも理ちゃん。何を持ってきたんですか?
|
|
先週家を整理していたら、ランドセルが出てきたのよ。そのことをクラスの友達に話したら、今度小学校に上がる妹がいるから持ってきてほしいと言われたの。だから、持って来たの。
|
|
へー、ランドセルですか。
|
|
ランドセルはなかなか壊れないものだから、小学校の全学年とおしてずっと使ってきたわねえ。
|
|
それはまるで“Java(ジャバ)”みたいですね。
|
|
Java? 何それ、コーヒーの銘柄のこと?
|
|
いえ、違いますよ。プログラム言語のことです。
|
|
プログラム言語? そういえば、インターネットをしているときに、このページはJavaを使っていますとか書いてあったのを見たことがある気がするわ。
|
|
そう、そのJavaです。
|
|
へー、Javaってプログラムだったんだ。プログラムって、アプリケーションと同じような意味なんでしょう。
|
|
プログラム“言語”と、言語がついているので、アプリケーションを作るための言葉になります。
|
|
で、それがなぜランドセルと似ているの? 形が似ているとか?
|
|
形は似ていませんよ。そうですね、それはJavaの特長がランドセルと似ているからです。
それじゃあちょっと、Javaの説明をすることにしましょう。
|
ランドセル
|
めも理と窓太の4コマまんが 「Java」 |
|
さて、めも理ちゃん。小学校の頃にはいろいろと勉強道具を買い揃えましたよね。
|
|
そうね、教科書やノートとか、ほかにも九九の表とかもあった気がするわ。でも、学校で必要な物ってたいていそうだけど、学年が変わると途端に使えなくなるのよね。せっかくきちんと買った物が、使えなくなるのはもったいないと思うわ。
|
|
そうですね。たいていの物は学年が変わると使用できませんからね。じゃあ、ランドセルはどうですか?
|
|
ランドセルは違うわ。丈夫で壊れないし、長持ちするし。そもそも小学校の間、どの学年でも使えるように最初から作られている優れ物よ。
|
|
実はJavaも同じような考えの下で作られているのです。
|
|
えっ、どの学年でも使えるの?
|
|
Javaが使えるのは、学年ではなく、OSなのです。
Javaには、「Write Once, Run Anywhere」という特長があるのです。
あっ、めも理ちゃん、英語が出てきたからといって帰らないで下さい。日本語に訳すと「一度書いたら、どこでも使える」という意味です。
|
|
最初から日本語で言えばいいのよ。
|
|
すみません。
ランドセルが「一度買ったら、全学年使える」のと同じように、Javaでは、一度作ったプログラムがどのOSでも使えるような仕組みになっているのです。
|
|
ふーん、Javaで作られていない普通のアプリケーションは動かないの?
|
|
動きません。
|
|
ガーン、そうだったんだ。
|
|
Java製のアプリケーションはいろんなOSの上で動くのです。それこそ、Windows上でも、Macintosh上でも、Linux上でも動くのです。
|
|
へー、便利ね。何もしないでもすぐ動くの?
|
|
実は、そこまで便利ではないんですね。
“Java 2 Runtime Environment(ジャバ・ツー・ランタイム・エンバイラメント、通称“JRE(ジェイアールイー)”)”という、Javaを動かすソフトをインストールすれば、動くようになります。各OS向けに、Javaを動かすためのソフトJREが用意されているのです。
|
|
はあ。世の中、そこまで便利じゃないというわけね。
|
|
そうですね。その代わりに、きちんとしたアプリケーションから、本格的なゲームまで、何でも作って、どのOSでも動かすことができますよ。
|
|
ねえ窓太。そういえば、“JavaScript(ジャバ・スクリプト)”という言葉も聞いたことがあるんだけど、これも同じようなものなの?
|
|
JavaScriptは、Javaと名前は似ていますが、別のものです。
こちらは、Webブラウザー上で動くプログラム言語です。Webページ上で画像を動かしたり、フォームに入力されているデータを書き替えたりといった、Webページに、簡単な機能や装飾を提供したりするためプログラム言語です。
|
|
ふーん、JavaはJREで動いて、JavaScriptはWebブラウザー上で動くんだ。
|
|
そうです。あと、JavaScriptは、Webブラウザー上で実行するプログラムなので、いろんな機能制限があります。
|
|
機能制限?
|
|
例えば、JavaScriptの書かれたページを見た人のハードディスクの中身がいきなり消去されたりしたら困りますよね。
|
|
それは困るわ。
|
|
そういったことができないように、Webページを見ている人のパソコン内のファイルにアクセスできなかったりといった、いくつかの制限がつけられているのです。
JavaScriptも、OSが違っていても、JavaScript対応WebブラウザーさえあればどのOSでも動作するので便利ですよ。
|
|
へー、そうなんだ。
|
|
そうです。「InternetExplorer」や「Netscape」「Opera」「Mozilla」など、たいていのWebブラウザー上で動作します。
|
|
環境が変わっても使えるものって便利ねえ。
|
小学生並
|
このランドセルはまだまだ使えそうですね。
|
|
ええ、だから持ってきたのよ。
|
|
めも理ちゃん、高校でもこれを使ってはどうですか?
|
|
何よ。私にランドセルを背負って学校に来いというの?
|
|
大丈夫ですよ。小学校でも、中学校でも、高校でも、めも理ちゃんの頭は小学生並のままですから。
|
今回出てきた用語の解説
【Java】 どのOS上でも、プログラムを書き直すことなく実行できることを目指して作られたプログラム言語。Sun Microsystems, Inc.が開発。
【プログラム言語】 アプリケーションを作るために、人間が分かる形式で書かれたプログラムのこと。通常はそのままではアプリケーションとして動作せず、このプログラム言語を、コンパイルというコンピューターが分かる形式に変換する作業をしてから利用する。
【JRE】 “Java 2 Runtime Environment”の略。直訳すると、Java実行環境。各OSにこのJREをインストールすることで、Javaで作られたアプリケーションが動作するようになる。
【JavaScript】 Webブラウザー上で実行するプログラム。HTMLファイル内に直接プログラムを記述することで、Webブラウザー上で実行される。
JavaScriptは、そのプログラムの書き方においてJavaの書き方を一部参考にしており(Javaの開発元であるSun Microsystems, Inc.が、JavaScriptの開発元のNetscape Communications Corporationに協力)、似た名前が冠されるようになった。
プログラム言語としてはシンプルで、かつWebの普及でJavaScriptに慣れている人が多いため、最近では、「Photoshop」の自動処理記述用言語として採用されるなど、応用範囲も広くなりつつある。
(クロノス・クラウン:柳井 政和)