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【第62回】
チャット 紙飛行機に託したメッセージ
(04/04/05)
窓の杜高校、超パソコン部の部室。
あらあら、めも理ちゃん。今日は宿題をやっているようです。
一体、何が起こったのでしょう?
大量の宿題
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あれ、めも理ちゃん珍しく宿題をやっているんですか?
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そうよ、授業中に怒られて、大量に宿題を出されてしまったのよ。
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授業中に怒られたって、一体何をしでかしたんですか?
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ノートを破って手紙を書いて、紙飛行機にして数人で手紙のやり取りをしていたのよ。そうしたらそれが先生にバレて、こっぴどく叱られたというわけよ。
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そんなことをしていたら怒られますよ。しかし、そのやり取りは何だか“チャット”みたいですね。
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チャット? 何それ。
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まあ、今回の授業中の手紙みたいなものですよ。
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仕方がないわねえ、窓太のウンチク話でも聞いて、宿題の手を休めるとしますか。
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チャット
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めも理と窓太の4コマまんが 「チャット」 |
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それじゃあめも理ちゃん。何で紙飛行機で手紙のやり取りをしていたんですか?
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そりゃあまあ、授業中だから声も出せないし、仕方がないから、手紙を書いて、送り合っていたのよ。紙飛行機にして投げれば、すぐに相手に届けることができるしね。
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チャットも今回の手紙のやり取りによく似ています。チャットとは、文字で会話をすることなのです。
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文字で会話? 『ねえねえそこの君、“ぬ”についておおいに語ろうではないか』とか?
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違いますよ。会話の内容を文章で書いて、手紙のようにやり取りするということです。
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わ、分かっているわよそのぐらい。でも、それってメールとどう違うの?
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それじゃあ、チャットとメールの違いを説明するために、少しこの2つのやり取りの仕組みを説明しますね。
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分かったわ。
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さて、メールやチャットの仕組みを説明するには、“サーバー”と“クライアント”のことを知っていなければいけません。分かりやすいように、サーバーを“郵便局”、クライアントをめも理ちゃんの家などの“各家庭”として説明します。
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いいわ、サーバーというのが郵便局で、クライアントというのが私の家と考えればいいのね。
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それではまず、メールの仕組みを説明します。メールの場合、文章を書いたら普通の郵便物のように手紙を投函します。そうすると、文章が郵便局に届きます。
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ここまでは普通の郵便物と同じね。
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ただし、メールの場合は手紙の受け取り手に直接手紙が届くわけではありません。手紙は、サーバー上の私書箱のような場所に保管されます。手紙の受け取り手は、定期的に郵便局を訪問して、私書箱に手紙が届いていないかどうかをチェックしなければいけません。
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そういえば、メーラーを使っていると、[送受信]というボタンをクリックして、サーバーにメールがないかどうかをチェックするわね。あれは、私書箱に手紙が届いてないかどうかをチェックしているというわけね。
じゃあ、メールに対してチャットはどうなっているの?
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チャットの仕組みの説明をする前に、インターネット上でよく見られるチャットの利用方法を説明します。
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いいわよ。
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チャットを行う場合は、まず参加する“ルーム”を選びます。これは“チャットルーム”とも呼びます。
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ルーム? ルームって部屋のこと?
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そうです。例えば、お菓子に関するルームでは、お菓子の話題をする人たちが参加しています。ケーキに関するルームでは、ケーキの話題をする人たちが参加しています。
そういったいろいろとあるルームのなかから、まずは参加したいルームを選ぶのです。
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ルームを選ぶということは、つまり加わりたい話題が話されている部屋に入るということなの?
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そうなりますね。会議室のようなある程度広い部屋に、いろんな人が入って来られる状態を想像して下さい。
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分かったわ。
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さて、それではいよいよチャットの仕組みを説明します。ルームというのは、特殊な私書箱のようなものだと思って下さい。この私書箱の中には小さな人が住んでいて、私書箱に手紙が届くとその手紙のコピーを取って、ルームに参加している人全員に素早く配ってくれるのです。
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つまり、ルームの利用者の誰かが文章を書いて、私書箱にその文章を送ると、そのルームの利用者全員がすぐにその文章を読めるというわけ?
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そうです。ほとんど時間をおかずに全員が文章を確認できます。そのため、同じルームに参加している人は、リアルタイムに文章を書いたり読んだりして、会話をするように文章のやり取りができるようになるわけです。
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なるほどね。
メールの場合は、手紙を郵便局に取りにいくまで手紙が届いたことも分からないから、受身なやり取りになるわね。
それに対してチャットの場合はすぐに文章が届くから、どんどん文章を書いて返信を書きあうという積極的なやり取りができるということかしら?
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めも理ちゃんの言うとおりです。チャットの方がメールより積極的なやり取りになります。ただし、チャットはこういった仕組みですので、ルームから退出したり、チャット用のアプリケーションを終了したら、文章は届かないようになります。
部屋から出ると、部屋の中の声が聞こえなくなるようなものですね。
メールだと、サーバーに届いた手紙は取りに行くまでサーバーに保管されていますので、メールとチャットではこの点が大きく異なります。
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そうなんだ。
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それからチャットルームは、参加者の制限を設けなければ基本的に誰でも入ってくることができます。そのためチャットは、基本的に不特定多数の人とやりとりをする方法と思っておくとよいです。ですから、秘密の話をしたいときには注意が必要です。
誰か特定の人とやりとりをしているつもりでも、その内容は、不特定多数の人に対して公開されています。秘密の話をするときには、友人以外はそのチャットルームに入られないようにするなどして、参加者を制限しておかないといけません。
また、チャット用のアプリケーションによっては、ルーム内で会話をしていても、ルーム内の特定の人だけに文章を送る機能がついている場合もあります。秘密の会話をしたいときには、こういった機能を利用するという手もあります。
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分かったわ。基本的にチャットは、誰でも入室可能な部屋で大声で会話しているようなものというわけね。
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はい、そうなりますね。とはいえ、多人数で話し合うときにはチャットは便利な通信手段です。
また会話の文章が全部テキストファイルとして保存できる場合も多いので、後で会話の内容を確認するのも楽です。この場合の保存されたテキストファイルは、チャットの“ログ”と呼ばれます。
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何を話したのかを、あとで見られるのは便利ね。
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チャットの詳しい仕組みについても、少し踏み込んで紹介しますね。チャットの仕組みには、大別して2つの方法があります。
まず1つ目のやり方は、サーバーからクライアントに対してメッセージが随時送りつけられるというやり方です。
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つまり、どういうことなの?
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これは言い換えれば、私書箱に手紙が届くたびに、郵便局から各家庭にすぐに手紙を配達してくれるという方法です。誰かが文章を書いてサーバーに文章が送られると、すぐにサーバーはクライアント全員にその文章を届けてくれます。ですので、ほとんど時間差なく、ルームの参加者は全員同じ文章を読むことができます。
この方法は、チャット専用のアプリケーションを使う場合に多く使われている方法です。
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2つ目のやり方は?
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2つ目のやり方は、クライアントが何度もサーバーに手紙が届いているか問い合わせるというやり方です。これは言い換えれば、郵便局に手紙が届いているかを、何度も何度も電話で確認するような方法です。
この方法は、擬似リアルタイム方式とも呼ばれています。Web上のチャットページなどでよく見られるやり方ですね。
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詳しい仕組みは私には分からないけど、どちらの場合もルームに入っている間、ほぼリアルタイムに会話ができるというのがチャットと思えばよいのね。
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そうです。また、チャットという言葉はより広い意味で使われることも多いです。文字を使ってリアルタイムでやり取りする方法全般をチャットと呼ぶこともあります。また、文字を使ってやり取りする以外にも、ネットワークをとおしてリアルタイムでコミュニケーションすること自体をチャットと呼ぶこともあるのです。
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じゃあ、どういったアプリケーションにチャット機能がついているの?
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まず、一番利用率が高いと思われるのは、インスタントメッセンジャーという種類のソフトですね。
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インスタントメッセンジャー? カップラーメンの仲間?
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違いますよ。利用者間で、相手に直接メッセージを送り合うアプリケーションのことです。
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それって、チャットやメールとどこが違うの?
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チャットをしたいと思う人は、専用のアプリケーションを起動して、特定のチャットルームに入ったり、Web上のチャットルームに入ってからチャットを行うのです。
つまり、チャットルームに入室をしていない時は、文章のやり取りは行えないというわけです。
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つまり、送っても届かないというわけよね。当然じゃないの。
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そうです。それに対してインスタントメッセンジャーは、いつでもメッセージを受け取れるようにしておくソフトです。
先ほどの、郵便局と各家庭の例で言うならば、個人宛の手紙が着たら、郵便局員が家まで来て、個人に直接手紙を手渡ししてくれるような方法です。
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私書箱に届くのではないのね。
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直接本人にメッセージが届きます。インスタントメッセンジャーは、自分の友人を登録しておき、その相手からの急ぎのメッセージをいつでも受け取れるようにするためのアプリケーションです。いつでも文章を受け取れるようにしておくために、常駐ソフトとして起動しっぱなしにしておく必要があります。
インスタントメッセンジャーは、携帯電話に近いアプリケーションです。インスタントメッセンジャーを起動しておくというのは、携帯電話の電源を入れっぱなしにしておくようなものです。
インスタントメッセンジャーを使えば、パソコンを起動して、インターネットに接続中の友人に、好きなタイミングで文章を直接送れるようになります。
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へー、誰にでも文章を送れるの?
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携帯電話で電話をかけるときは、携帯電話のアドレス帳から電話をかけることが多いですよね。インスタントメッセンジャーにも、このアドレス帳のようなものがあり、そのリストから選んだ相手にメッセージを送ります。
このリストを、“コンタクトリスト”とか“メンバーリスト”と呼びます。友だちや知り合いをこのリストに登録しておいて、その相手に直接メッセージを送るのです。全然関係ない人にメッセージを送るわけではありません。
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まあ、携帯電話も知り合いぐらいにしかかけないから、似たようなものね。
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また、インスタントメッセンジャーを使えば、そのリストに登録されている人が、インターネットに接続していてメッセージを受け取ることが可能な状態かどうかも確認することができます。
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へー、それじゃあメッセージを送ったけど、届かなかったということはないのね。確実に連絡が取れるわね。
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そうです。基本的にインスタントメッセンジャーは、友達や知り合いとプライベートなやりとりをするための方法です。
1対1だけではなく、別の人にもメッセージを送ることができますが、その相手も知り合いだけです。やりとりした内容も相手にしか見えないので、身近な人とやり取りをするときに使われることが多いですね。
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私の場合、友達や知り合いが少ないんだけど。
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えー、インスタントメッセンジャーには、友達や知り合いを増やすための機能がついてたりもするので、友達が少ない人でも安心ですよ。自分の趣味や、居住地などから、話し相手を探す機能などもあります。そういった機能を使えば、新しいコミュニケーションの輪が広がったりもしますよ。
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それなら安心ね。
えーと、いろいろ話が出て来たから少しまとめるわね。チャットは不特定の相手とワイワイガヤガヤと話をするイメージで、インスタントメッセンジャーは特定の相手とコソコソ話すイメージでいいのかしら。
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だいたいそう思っておけばよいです。
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それじゃあ、インスタントメッセンジャーについているチャットの機能ってどういう風に使われるの?
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使われ方のイメージとしては、携帯電話(インスタントメッセンジャー)で相手を呼び出したあと、会議室(チャットルーム)に入って話し合いをすると思えばよいでしょう。
まあ、チャットもインスタントメッセンジャーも文字でリアルタイムにメッセージを送りあうアプリケーションです。そのため、広義のチャットにインスタントメッセンジャーも含まれます。
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ほかにもチャット機能がついているアプリケーションはあるの?
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ありますよ。ネットワークで通信しながら遊ぶゲームにも、チャット機能がついているものが多いです。ゲーム内で一緒にプレイしながら、チャットでお喋りをするという使い方ですね。
この場合は、対戦相手と会話をしたり、協力して遊んでいる仲間と会話をしたりという形式になります。チャットルームとは、少し異なった形式ではありますが、これもチャットの一形態です。
こういった場合のチャットの参加者は、みんな同じゲームをしている人たちなので話が弾みますよ。
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へー、とても楽しそうね。今度やってみようかしら。チャット機能って、なかなか楽しそうな機能ね。
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窓の杜にも、チャットや、メッセンジャーのソフトがありますので、使ってみて下さいね。
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新しいやり方
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ふふふ、ねえ窓太。
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どうしたんですかめも理ちゃん。不敵な笑みを浮かべて。
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あれから教室内でのチャットを先生にばれずに行う方法を考えていたのよ。そして、とうとうひらめいたのよ!
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えっ、どんな方法なのですか?
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それは、目に見えないぐらい小さな紙飛行機を作ることよ! そうすれば先生が振り向いてもバレないわ。どう、この画期的考え、素晴らしいでしょう。
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……そんな、目に見えないぐらい小さな紙飛行機に書いた文字を、どうやって読むんですか?
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うっ、そこまで考えてなかったわ。
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めも理ちゃん、お願いですからおとなしく授業を聞いて下さいね。
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今回出てきた用語の解説
【チャット】 文字を使って、リアルタイムでネットワーク上の人と会話をする機能。
【インスタントメッセンジャー】 ネットワーク上につないでいてインスタントメッセンジャーを起動しているパソコンに、電話をかけるようにメッセージを直接送るソフト。そのまま相手が返事をすればチャットに移行することが多いので、たいていチャット機能がついている。
(クロノス・クラウン:柳井 政和)